原野を切り開いた「日ハム球場前」にタワマンを建てる… 無謀な開発が地域も日本も崩壊させる

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原野に高さ130メートルの高層マンション

 全国に建つタワーマンション、すなわち20階建て以上の分譲マンションの総数は、2024年12月現在で1,561棟、41万102戸を数える。同じ時点で、今年の竣工予定が41棟、1万2,104戸となっていた。

 一方、2024年の出生数は72万988人(外国人をふくむ速報値)と過去最少だった。日本の人口は89万8,000人減と過去最高の減少幅を記録し、婚姻数も戦後2番目に少ない49万9,999組にとどまった。しかも、周知のように、この少子化は歯止めがかかる見込みがない。2017年に出生数がはじめて100万人を割ってから、わずか7年でさらに3割近く減少し、さらにどこまで減るのか見当もつかない。

 それなのにタワーマンションは建ち続ける日本。いったいどうなっているのか。

 なかでも驚かされるのは、日本ハムファイターズの本拠地、北海道北広島市の「エスコンフィールドHOKKAIDO」の隣接地に2028年ごろ、高さ約130メートル、36階建てで約500戸のタワーマンションが建設される計画が、市の都市計画審議会で示されたことである。もともと、この球場はJR北広島駅の北西約1キロのエリアに広がる原野を切り開いて建設された。

 たしかに、北広島市と民間の共同事業として、スタジアム建設にとどまらず、新駅や商業施設、マンションを一体にした「北海道ボールパークFビレッジ」なる街づくりを行うとは聞いていた。だが、人口の減少がこれほど問題となっているいま、わざわざ原野に高さ130メートルもの超高層マンションを建てるという発想は、想像を超えていた。

 このエリアは現在、建物の高さは70メートルに制限されているが、「土地の高度利用を図るため」に、高さ制限の緩和が検討されているという。しかし、「土地の高度利用」というが、周囲は原野である。

タワーマンションが廃墟になる可能性が高い理由

 前述したように、いま全国で人口減少に見舞われ、この流れが止まる見込みはない。このため、どの地方都市も濃淡はあってもほぼ例外なく、人口減少エリアが増え、空き家問題も深刻化している。その状況で、なぜあらたに巨大なタワーマンションを建てるのか。

 タワーマンションの建設に前のめりの地方自治体は多い。その理由は、居住人口の増加が見込め、固定資産税、市民税、所得税などの税収増が見込め、さらに開発による経済効果が期待できるからである。いいことずくめに聞こえるかもしれないが、得られるのはあくまでも短期的な成果にすぎない。タワーマンションの建設によるリスクが、恐ろしいことに、まったく考慮されていない。

 そのリスクはさまざまに指摘できる。人口が増えていない以上、周囲の地域の空洞化をまねくのはいうまでもない。そのうえ、1棟建てば一定の人口をかかえるため、道路や上下水道、それに学校などの公共インフラを、追加投資する必要が生じる。だが、人口が減少する局面では、既存のインフラの維持さえ困難で、整理や統合が必要になる。それなのに、あらたに公共インフラを整備せざるをえないなど、ナンセンスきわまりない。

 次に、一般にタワーマンションの入居者は、同じ程度の所得を有し、年齢も近い層になるというリスクが挙げられる。つまり、みな一斉に年齢を重ねる。同じ時期に入居した人たちが一斉に高齢化し、空室だらけになって高層住宅自体が廃墟になっていくという事例は、すでに高度成長期に建てられたニュータウンなどでいくつも見られている。

 タワーマンションは修繕に費用がかかるため、一般に修繕積立金が高い。だが、建設から時間が経って、実際に大規模修繕や建て替えが必要になったときに、修繕積立金の増額について入居者の合意が得られるのか。商業ビルであれば所有者が一元的に管理し、修繕にせよ建て替えにせよ、意思決定して実行に移せる。しかし、分譲されたタワーマンションの場合は、入居する所有者同士の合意形成が難しい。その人たちがみな高齢化していればなおさらである。その結果、修繕も建て替えもできず、廃墟になるリスクが非常に高い。

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