ハーバード大で「リベラル狩り」、AP通信に「出禁」命令…トランプ大統領はもはや“独裁者”か 「日刊ゲンダイでも読んでくださいよ」と返した安倍元首相との決定的な違い

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「最もクールなこと」

 バンス副大統領はオハイオ州のバトラー群にあるミドルタウンという小さな街で生まれ育った。2020年の人口は約5万人。ここは典型的な“ラストベルト”として知られる。

 日本語では「さび付いた地域」と訳されるが、州の主要産業だった工業が衰退し、治安や住民のモラルが著しく低下した地域を指す。

 バンス副大統領が生まれたのは、母親が離婚と結婚を繰り返すという複雑な家庭環境。また母親は薬物に依存し、幼少期から貧困に苦しめられ、様々な虐待を受けて育った。

 地元の公立高校を卒業すると海兵隊に入隊。イラクに派遣され広報を担当したこともある。除隊後にオハイオ州立大学に進学すると、名門イェール大学のロースクールで学位を修得した。

 その苛酷な人生は自伝『ヒルベリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)で詳述され、アメリカではベストセラーになった。

 バンス副大統領は「はじめに」の中で、イェール大学のロースクールを修了したことを《これまでに私がしたことで最もクールなこと》だと記している。担当記者が言う。

「大統領や副大統領を輩出した名門大学に対し、政権が圧力をかけるという前代未聞の事態が今も進行しています。そして政権への対応で注目を集めているのがコロンビア大学とハーバード大学です。共にアイビー・リーグに含まれる名門大学ですが、コロンビア大学はトランプ大統領の要求をある程度は受け入れました。大学構内で行われるイスラエルへの抗議デモへの対応を強化するほか、一部の教育内容も見直すと発表したのです」

保守ではなく独裁

 ただしコロンビア大学は「教育機関としての独立は維持する」とも主張している。まずは政権との協議を優先している印象だ。

 一方のハーバード大学は徹底抗戦の構えを鮮明にした。そのため2つの大学は比較の対象になっている。

 ハーバード大学はトランプ大統領の要求を完全に拒否。これに報復しようとトランプ政権は4月14日に22億6000万ドル(約3200億円)の予算支出を停止した。さらに国土安全保障省が大学を「反ユダヤ主義の拠点」と見なし、16日には270万ドル(約3億8000万円)の補助金も停止すると発表した。

 トランプ政権の報復は許さないと、ハーバード大学は4月21日、助成金凍結の取り消しを求める訴訟をマサチューセッツ州の連邦地方裁判所に提訴した。政権の動きは大学を支配しようとするもので、助成金の停止は政府の権限を越えていると主張している。

「日本でも政権と大学の対立は大きく報道されていますが、一部のメディアの記事には気になる点があります。それは『保守派のトランプ大統領がリベラル派の大学を狙い撃ちしている』という解説が散見されることです。アメリカの名門大学がリベラルな校風であるのは事実でしょう。しかし大学に論争を挑むのではなく、補助金の凍結などで脅迫するという姿勢と『保守』は関係ないはずです。本質は政権による言論弾圧なのですから、『独裁者のトランプ大統領が名門大学を不当に攻撃している』という本質的な指摘が足りない印象を持っています」(同・記者)

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