ハーバード大で「リベラル狩り」、AP通信に「出禁」命令…トランプ大統領はもはや“独裁者”か 「日刊ゲンダイでも読んでくださいよ」と返した安倍元首相との決定的な違い

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 トランプ大統領がアメリカの名門大学に教育方針や学内の自治を見直すよう要求し、従わない場合は補助金を凍結するなどの圧力をかけている。日本では「トランプ大統領がハーバード大学を狙い撃ちにしている」と誤解している人もいるようだが、対象となっている大学は4月21日現在で最大60大学。その中にはトランプ大統領やバンス副大統領が卒業した大学も含まれる。(全2回の第1回)

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 トランプ大統領はペンシルベニア大学の卒業生だ。アメリカの北東部にはエリートを多数輩出している8つの私立大学があり、これらをアイビー・リーグと呼ぶ。

 日本にも東京六大学や関西六大学があるわけだが、そのペンシルベニア大学はアイビーリーグの1校に数えられている。

 トランプ大統領が名門大学に対して初めて圧力をかけた際、ターゲットには母校が選ばれた。3月19日、ペンシルベニア大学に対する約1億7500万ドル(約261億円)の連邦資金の支給を停止すると発表したのだ。

 停止の理由は、男性から女性に性別変更した水泳のリア・トーマス選手を問題視したからだ。トーマス選手はかつてペンシルベニア大学の水泳チームに所属し、NCAA(全米大学体育協会)の水泳選手権で女性として優勝した。

 トランプ大統領は今年2月にトランスジェンダーの選手が女子大会に出場することを禁止する大統領令に署名した。そのためアメリカ政府はトーマス選手の大会参加を認めたペンシルベニア大学の判断を疑問視し、調査に乗り出していた。

 そもそもトランプ大統領はDEIを逆差別とする姿勢を鮮明にしていた。DEIとは「Diversity(多様性)」、「Equity(公平性)」、「Inclusion(包括性)」の頭文字を取った略語。ペンシルベニア大学に対する圧力は、反DEI政策の一環として行われた。

「反ユダヤ主義」の主張

 DEIの具体例としては、大学や企業などの組織で人種や性別、障害に対する差別を排除したり、性自認や性的指向の多様性を尊重したりすることなどが挙げられる。

 トランプ大統領がDEIの見直しを求めたため、アメリカの教育省は3月14日に51の大学に問題があると発表した。

 いずれも黒人学生の優遇措置(アファーマティブ・アクション)を採用したことで、白人とアジア系の学生が差別されたと指摘したのだ。

 調査対象となった大学のリストの中には、アイビー・リーグのコーネル大学や、理系の超名門大学として知られるマサチューセッツ工科大学(MIT)の校名も記されていた。

 さらにトランプ大統領は「反ユダヤ主義の行動は容認しない」と強く主張しており、この点からも名門大学の姿勢を問題視している。

 字面だけを見ればユダヤ人差別に厳しい姿勢を示しているように思える。だが「反イスラエルのデモは絶対に許さない」というのが本音だ。パレスチナのガザ地区で繰り広げられているイスラエルの攻撃に反対、停戦を求めるデモに参加する大学生に「ユダヤ人を差別している」と言いがかりを付けているようにも映る。

 トランプ政権は60大学を対象に反ユダヤ的活動の調査を行うと発表。この中にはイェール大学が含まれており、ここはバンス副大統領の母校だ。

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