トランプ政権で強まる「大学弾圧」 景気後退が近づくにつれ過激な政策が勢いを増し
世界の観光客に逃げられる米国
観光業界は既に悪影響を被っている。
米国政府によれば、海外から米国に訪れる旅客数(カナダとメキシコの一部を除く)は3月の暫定値で前年から11.6%減少した。新型コロナのパンデミック時を除けば、リーマンショック後の不況期だった2009年5月以来の減少率だ。
ゴールドマン・サックスは、インバウンドの減少規模が約900億ドル(約12兆9000億円、GDPの0.3%)に達する可能性を予測している。
トランプ政権への悪評から、世界各国が相次いで米国への渡航に注意を呼びかけていることも頭の痛い問題だ。「中国並みの警戒が必要」とする国も出ているほどだ。
この動きに対し、ホワイトハウスは会見で、米国は「引き続き訪れる価値のある国」と強調している。米国のソフトパワーは地に落ちた感がある。
米国の観光業界の心配の種はまだある。3月の民間調査で、米国人の4分の1が「日常の生活費が高いため、夏の旅行をしない」ことが明らかになった。弱り目に祟り目だ。
トランプ氏は足元の景気悪化の兆しを踏まえ、利下げを強く求めているが、インフレ再燃を懸念する米連邦準備理事会(FRB)は、これに応ずる気配がない。
移民、大学への攻撃…過激さを増す政策
米国経済がリセッション入りするのは時間の問題なのかもしれない。共和党内でも不満が高まりつつあるが、トランプ氏を強く支持する層(MAGA支持者)はほとんど揺らいでいない。
筆者はむしろ、経済が悪化すればするほど、トランプ氏はMAGA支持者にアピールできる政策を強化するのではないかと危惧している。
トランプ政権は移民の追跡、拘束を目的とした監視システムと、人工知能(AI)の活用を強化している。これに対し、ほぼ誰もが取り締まりの対象になりかねないという懸念が浮上している(4月18日付ロイター)。
最も懸念すべきは、大学など高等研究機関への圧力を高めていることだ。
トランプ氏は4月24日、名門ハーバード大学を「反ユダヤ主義の極左機関」と非難した。トランプ政権は、各地の大学が反ユダヤ主義や反白人的な偏見などを推進していると非難し、大学への強硬姿勢を強めている。
これにより、高度な研究人材の海外流出が起き、米国の国力が低下するとの懸念が強まっている。だが、「大学などの研究者たちがグローバル化の恩恵を独り占めしている」というMAGA支持者の“積年の恨み”に寄り添うトランプ政権は、大学への「弾圧」をさらに続けることだろう。
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