まるで“神のメモ書き” ヒルマ・アフ・クリントに世界が気づいた理由とは
修行僧のような生きざま
ところで、アフ・クリントは科学や児童教育といった多岐にわたる分野に興味を持つと共に、中でも秘教的思想や霊媒を深く学んでいたことから「オカルト」の枕詞がつくことが多い。作品に出会う以前に、拒絶感を抱かれたり、妙な先入観を持たれてしまうのではないかと心配してしまう。三輪氏自身は「オカルト」という言葉を使わず「スピリチュアル」と表現しているが、それでも模索は続く。
「どこの一線を越えると人は胡散臭さを感じるのか、逆に今の時代はどうなのかがすごく気になり始めています。そんな中、いろんな資料を読んでいると、アフ・クリントの人間性が浮かび上がってくるんですね。それが自分を律して一貫して人生を捧げて生きてゆく姿なのです。この姿は胡散臭さとはほど遠く、むしろ修行僧のようだな、と感じるのです」
修行僧。そうだ、この言葉が何よりもピタリと当てはまる。
そういえば、今回の展覧会のサブタイトルは「The Beyond(彼方より~)」とサラリとしたものだ。話題性をねらったワードをあえて外してあるところから、なんの先入観もなくアフ・クリントと出会い、そして生涯の友となる誰かを待っているような、そんな願いが込められているようにも見えてくる。
【開催概要】
展覧会名:ヒルマ・アフ・クリント展
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
会期:2025年3月4日(火)-6月15日(日)
休館日:月曜日(ただし5月5日は開館)、5月7日
開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)※入館は閉館の30分前まで
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