「3億円事件以来の見事な知能犯」との声も…破綻銀行から白昼堂々と「1億円」を盗み出した平成の「連続詐欺・窃盗」事件
「まれに見る規模」と裁判官
2001年4月27日、ゴールデンウィーク直前の金曜。一週間前に破綻申請したばかりの京都の金融機関で、一風変わった盗難事件が発生した。関係者になりすました男が電話一本でアポを入れ、何の問題もなく中に通されると、白昼堂々と1億円を持ち去ったのである。
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内部犯行説が頭をよぎる人は多いだろうが、そちらの線はシロ。ほどなくわかったのは、男が同種の詐欺・窃盗の常習犯であることだった。いったいなぜ裁判官が「まれに見る規模の連続詐欺、窃盗」と断じるほど犯行を重ねることができたのか。まずは、事件発生直後に掲載された「週刊新潮」の記事を見てみよう。
(「週刊新潮」2001年5月17日号「破綻『京都商銀』で白昼堂々1億円持ち逃げの怪」をもとに再構成しました)
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破綻申請した銀行にかかってきた電話
「それにしても昔の3億円事件以来の見事な知能犯罪でしたね。前以て相手に電話をかけて先入観を植え付けてしまったことや、怪我人一人出さなかった点もよく似ている」
ノンフィクション作家の佐木隆三さんを久しぶりに感心させた1億円窃盗事件。さる2001年4月27日、京都市内にある信用組合「京都商銀」南支店で白昼堂々と演じられた大胆な犯行は、あの怪盗ルパンも顔負けだった。
京都商銀は債務超過による経営破綻を4月20日に金融庁に申請したばかり。ゴタゴタ続きの同・南支店に突然、
「こちらは金融整理管財人補佐のカワベだが、店内に現金残高はいくらありますか」
中年男の声で、そんな内容の電話が入ったのは4月27日の午後0時半頃だった。応対したのは、この春に就任したばかりの新支店長である。
「は、7億円ばかりあります」
「普段は1億円程度しか置かないと聞いていたが……」
「はい、破綻申請後に預金の解約が増え、月末でもありますので多めに準備しました」
「1時間くらいしたら財務局の担当官が現金の確認に行く」
「はい、確かに承りました」
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