「ファクトチェック」や「誤字脱字」だけじゃない…校閲部員が重視する「合わせ」とは何か?
こんにちは。新潮社校閲部の甲谷です。
今回もクイズから始めます。
下の画像は、原稿に修正の指示(あかじ=赤字もしくは朱字と表記する)を記したものですが、1か所だけ修正の書き方にミスがあります。それを見つけてください。答えはこの記事の最後に掲載します。
プリントアウトしていただいても、スマートフォンの画面上でも大丈夫です。校正記号をご存じでなくても解けます。制限時間は20秒。では、どうぞ!
答えはこの記事の最後に掲載します。
校閲の3要素とは?
これまでの連載では雑学的な知識も含め、出版社の校閲の現場で判断に迷う事例や間違いやすい表現などを中心に書いてきましたが、
「そもそも校閲ってどんな仕事なの?」
という疑問をお持ちの方も多いはずです。そこで今回は、校閲の仕事内容について、あまり一般的には知られていない要素も含め、解説しようと思います。
なお、あくまで“一出版社社員の立場”の話となりますので、すべてに当てはまる事例ではないことをご了承ください。また、似た意味で「校正」という言葉も使われますが、この連載では私の勤務先の名称に従い、今後も「校閲」で統一します。もう一つ。「原稿の試し刷り」を意味する「ゲラ」という言葉も、今後は注釈なしで使わせていただくことをご了承ください。
さて、校閲という仕事の中身は、大雑把に言えば3つの要素に分けられます。それは、以下のようになります。
(1)調べ (2)素読み(すよみ) (3)合わせ
(1)は昨今、社会的な課題ともなっている事実確認、すなわち「ファクトチェック」と呼ばれるものです。(2)は原稿を最初から最後まで通しで読んで、誤字脱字などの単純な誤植や矛盾点、文章のつながりの不備などを指摘する作業を指します。
世間で抱かれる校閲のイメージは、(1)か(2)のどちらかではないでしょうか。
合わせって何ですか?
ただ、(3)の「合わせ」も、校閲の業務としては非常に重要な位置を占めます。
「合わせ」の一例としては、とあるゲラ(初校、一校などと言う)に作家さんや編集者から修正が入った際、次のバージョンのゲラ(再校、二校)に修正が正しく反映されているか、そして修正の内容そのものが適切であるかを確認する作業があります。これは初校、再校にとどまらずゲラが出る限り続きます。
まさに冒頭で解いていただいたクイズのように、修正の指示そのものが間違っていることもありますし、他にもさまざまな事象が現場では起こります(詳細はまた別の回に)。500ページ超の単行本で朱字が多いものだと、合わせだけで数日かかる、などということもあります。
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