僕を“おにいちゃん”と呼ぶ9歳年下のカノジョ…「そのうち捨てられるのでは」 アラフォー男性が抱き始めた束縛願望

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徐々に生い立ちが明かされて…

 つきあうことになっても彼はなかなか深い関係になろうとはしなかった。彼女を傷つけたくなかったからだ。そして愛実さんの24歳の誕生日に、「旅行したい」と言われて、ようやくその日が来たことがわかった。

「1泊のドライブ旅行でしたが、楽しかったし、かつてないほど彼女は自分のことを話しました」

 それによると彼女は、両親と姉との4人家族で育った。両親は再婚同士、そして姉は両親の養女だった。姉自身も愛実さんも、そのことは子どものころから知っていたし、両親は分け隔てなく育ててくれたので違和感はなかった。

 だが愛実さんが高校に入ったころ、ふと「姉はどこから来た人なんだろう」とシンプルな疑問がわいた。それまでそんなふうに考えたことはなかったが、疑問がわくと答えがほしくなるもの。かといって両親には尋ねづらかったので、父の妹である叔母に聞いてみた。

「そこで愛実は、両親の秘密を知ってしまったと言うんです。ここからが複雑でして」

想像以上のドロドロな関係

 話を整理すると、父の以前の結婚相手は、子連れの女性だった。夫に死なれ、乳飲み子を抱えた相手と結婚したのだ。ところが父は、既婚者だった母と出会ってしまう。ダブル不倫の末、父の結婚生活は3年余りで破綻。父の結婚相手は絶望したと置き手紙と娘を残して行方をくらませたのだが、実は男と逃げたのだという。子どもを残せば父が再婚できないだろうと考えたらしい。

 父は血のつながらない娘をひとりで育てていくことも考えた。だが、すでに恋に落ちていた母は、すべてを受け入れて父と再婚した。

「いい話じゃないですか。ただ、それを叔母から聞かされた愛実は、当時若かったこともあって、そんな男女のどろどろ話を好意的に受け止められなかった。そもそも親が不倫状態で恋に落ちたことに嫌悪感を覚えた。しかも、なんとなく両親は自分より姉のほうを愛しているような気がして、ちょっとグレたみたいですね。実子より養子のほうがかわいいのか、と思い込んだと言っていました。もうちょっと大人になってから聞けば、また違う気持ちになったのかもしれないけど」

 すでに30代になっていた晶一さんからすれば、「血のつながらない子を育てていこうとしたお父さんもえらいし、そんな相手と再婚を決めたお母さんもすごいと思った」そうだ。だが、愛実さんにはそうは思えず、20代になってからもそれをひきずっていたのだろう。

 ただ、晶一さんに出会って愛実さんも変わった。結婚を前提につきあおうという言葉を素直に受け、「私も高卒認定くらいとらないと」と勉強を始めた。アルバイト先の喫茶店の近くに借りていたアパートに、晶一さんはときどき訪れて勉強を見ることもあった。高校生の勉強はすでにむずかしくて忘れていることも多々あった。そんな晶一さんを見て、愛実さんは笑顔になった。今から大学に行けるかなと言い出したのは高卒認定を取得した2年後だった。

「なんだか勉強が楽しくなったみたいです。とりあえず受験してみればいいよと言いましたが、愛実との関係が男女というより父と子みたいになっていって、これでいいのかなと思うこともありました」

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