「日本に残してきた妻が浮気している」駐在夫のあきらめ やんわり苦言を呈すと…返ってきた言葉に思わずこみ上げた怒り

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「しっかりしすぎている」と母

 共働きの生活が始まった。子どもはまだ先と考えていたのに、うっかり避妊しなかったために広夏さんは妊娠した。

「当時は恨まれました。とはいえ、今日は大丈夫と言ったのは広夏だった。少し人生設計を変えればいいだけじゃないかと言ったら、『これで私の人生は狂った』と言っていましたね。でも妊娠は継続、無事に息子が生まれました」

 育休の都合上、どうせならもうひとり立て続けに産んでしまおうと広夏さんが言いだし、年子で娘が誕生した。ちょうどそのころから匡志さんの出張が増えた。主に海外だったから、最低でも1週間は必至で、匡志さんの母親が泊まり込みで手伝ってくれていたという。

「あまり愚痴を言わない母親が、『広夏さんはしっかりしすぎてる』とよくこぼしていました。こうしてください、ああしてくださいと言いたい放題だったみたい。その指示は間違ってはいない。でも情がないと。そういうタイプでもないんですが、広夏にしてみれば、古い育児法を押しつけられたくないと肩に力が入っていたんでしょう」

3年にわたる海外駐在、たまに会う子どもに「びっくり」

 自分は常に傍観者みたいなものだったと彼は恥じ入る。息子が3歳、娘が2歳のときには3年にわたる海外駐在に出発した。半年に1度は帰国したものの、「あまりに子どもたちが成長しているのでびっくりしたこともある」そうだ。

「さすがにこのままじゃどうなんだろうと思って上司に相談したこともあります。ただ、『任せられる人材がいないんだよ』と言われると、それ以上はなにも言えなかった。僕は発展途上の国に行くことが多かったので、家族帯同もむずかしい。本来なら独身者に行かせたいところだけどと上司も悩んでいたようです」

 そういった国である程度、仕事の業績を上げると、「あいつはできる」ということになり、結局、同じ人間にばかり仕事が回ってくると彼は言った。

「僕が優秀なわけじゃないんです。結局、誰かが行かなければならないから、はっきり断らない限り抜けられない。僕自身、東京本社で机の前に座っているより、そういう国々で困難と闘いながら現地の人と仕事をしていくのが楽しかった。そこは広夏にもきちんと説明しました。理解してもらうしかなかった」

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