株価大暴落でもテスラは「まだ大丈夫」? 反感買うマスク氏の裏で注目すべき5つの安心材料
過去10年間で「5割を超える下落」はが2年に1回起きている
とはいえ、このような株価の下落はテスラにとって初めてのことではありません。大幅下落は過去に何度も繰り返し経験しており、その都度株価は力強く戻ってきました。長年テスラ株を見てきた筆者にとっては、「またこのパターンか」と感じるほどです。
テスラが高値をつけてからの株価の推移を見てみると、テスラの下落率は平均25.5%となります。また、過去10年間でみても5割を超える下落は2年に1度程度は経験しているのです。
そもそも、テスラの株価は普通の自動車会社とは異なる評価を受けています。
昨年の売り上げでみると、トヨタの売り上げが45.1兆円であるのに対し、テスラは14.7兆円です。ところが時価総額でみると、株価が急落してもテスラの時価総額は約130兆円、一方トヨタの時価総額は約42兆円とその差はなんと約3倍です。
また今年のテスラの予想PER(株価収益率)は約98倍。一方のトヨタはわずか8倍。テスラは普通の自動車メーカーとは次元の異なる評価を市場から受けているのです。
テスラは電気自動車(EV)メーカーとして知られています。月ごとに納車台数が発表され、それが市場予想を上回れば株価は上昇し、下回れば下落します。しかし株価というものは「将来の期待」を織り込みにいきます。
現在のテスラの高いバリュエーションは、マーケットの評価は同社が単なる自動車企業ではないと見ていることの表れです。では、それは何かというと、テスラはAI企業であるということです。テスラはAI技術を使いテスラ車の自動運転を可能にしようとしているのです。
交通事故の94%は、運転者の判断ミスや不注意によるもの
テスラはドージョーチップと呼ばれる、自社開発による高性能なAIトレーニング専用プロセッサを保有しており、主に完全自動運転機能の精度向上を目的としたニューラルネットワークの学習に使っています。
そもそもなぜ自動運転が大事なのでしょう。それは交通事故の大半が人間のミスによって引き起こされているからです。米国運輸省によれば、年間600万件を超える交通事故の94%が、運転者の判断ミスや不注意によるものとされています。
この課題に対し、テスラが開発するFSD(完全自動運転)ソフトウェアが真価を発揮しようとしています。
テスラに強気の見方をしているアーク・インベストメントのキャシー・ウッド氏は、FSDが2025年末までに人間の運転能力を超える精度に到達すると見ています。これが現実のものになると、次の展開はロボタクシーです。ロボタクシーとは、無人の配車サービスです。
米国では現在、グーグルの傘下にある「Waymo」がすでにサンフランシスコなどでロボタクシーを展開していますが、まさに次世代の交通インフラと呼べるものです。
Waymoの自動運転の信頼性は「50万マイル(約80万キロ)に一度」人間の介入が必要とされていますが、これは現時点のテスラと同じ程度です。この「介入」とは、自動運転車が50万マイル走行するあいだに、1回だけ人間が操作を引き継がなければならなかったという意味で、自動運転の性能や信頼性を評価するための指標としてよく使われる表現です。
日本の教習所で習う「ヒヤリハット」のイメージが近いかも知れません。
人間のドライバーは「70万マイルに一度」の介入が必要といいます。つまり現段階ではテスラやWaymoがやや劣っている計算です。それが今年後半テスラのFSDの次世代バージョンが登場すると、テスラは一気にリードするとの見込みなのです。
[2/3ページ]


