「反省せずに解散命令を逃れようとしている」 旧統一教会内部で何が起きているのか 「信者の引き抜きも」

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「教会に実際に来ていただくのが一番」

 トランプ大統領自身も解散命令に反対の声を上げてくれるのではないか――これが旧統一教会信者たちの「希望的観測」である。実際、私が3月6日に行ったインタビューで、田中会長はこんな言葉を口にしている。

「海外ではさまざまな宗教家から、(解散命令は)深刻な宗教弾圧であるという指摘がなされています。でも、日本というのは不思議な国で国連勧告とかも無視するんですよね。そうなると、外圧として効果がある可能性が残っているのはアメリカくらいじゃないですか」

 もちろん、日本の裁判所の決定に他国が難癖をつけるのは「内政干渉」であることは言うまでもない。

 さらに、旧統一教会側がアピールに躍起になっているのが「開かれた教会」である。例えば、これまでも各地の教会は、公共施設などでバザーを開催していたのだが、その会場を「教会内」に変え、教団の内部に一般の人を出入りさせている。

「教会の近所の人たちも“あなたたち本当に大丈夫なの?”なんて冗談を言いながら楽しく参加してもらっています。ある教会では公安警察の方が見回りに来て、30分くらいお茶をして帰ったんですが、“スタッフの皆さんが素晴らしくて感動しました”とお褒めの言葉をいただきました。私たちが危険な団体ではないというのを分かってもらうには、こうして実際に教会に来ていただいて触れ合ってもらうのが一番じゃないかと思います」(田中会長)

「私たちは反省しなければいけない」

 ただ、このような教会の取り組みについて、冷ややかに見ている信者もいる。かつて某地域にある教会の教会長を務めた信者は、まず必要なのは「謝罪」だと言い切る。

「私は韓国に行って、文鮮明氏や幹部たちが日本で金を集めろと言っているのを直に聞いています。もちろん、そのお金集めはこの教団なりにちゃんと理由があるものなのですが、それを日本の信者たちが誤って解釈し、トラブルを招いたのは動かし難い事実です。私たちは反省しなければいけない。でも、教団は世の中の人に納得してもらえるような謝り方を、今日までしていないじゃないですか。今の田中さんが無理なら、過去の会長に来てもらって、しっかりと謝ってもらうのでもいい。そういう反省をしないで、解散命令を逃れようとすることの方が、この教団にとっては問題だと思います」

 教団トップから末端の信者までさまざまな思惑が交錯する「宗教解散」。いずれにしても、世間とのギャップは埋まらないまま「抗戦」が続けられている。

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窪田順生(くぼたまさき)
1974年生まれ。雑誌や新聞の記者を経てフリーランスのノンフィクション・ライターに。事件や世相などを幅広く取材。『14階段―検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。その他、著者多数。

週刊新潮 2025年4月10日号掲載

特別読物「解散命令に徹底抗戦 “神風”まで恃む旧統一教会の内情」より

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