「アメ車を輸入しろ」と迫る米大統領を黙らせた「安倍晋三元首相」の鮮やかすぎる返答…“悲劇の宰相”存命ならトランプ関税にどう対峙したか
関税率を暗記していた大統領
《実は、東京モーターショーに米国のメーカーが出展していないという話は、甘利明さんから事前に聞いていたのです。自動車の話題が出るだろうと思って、反撃の準備をしておかないといけないから》
安倍氏の回想を元に当時の新聞記事をチェックしてみると、改めてオバマ氏の個性が鮮明に浮かび上がる(註2、3、4)。
安倍氏が《雑談もせずにすぐに仕事の話になって》と振り返った通り、オバマ氏は寿司14貫を矢継ぎ早に食べながら、TPP(環太平洋連携協定)交渉で日本は妥協すべきだと強く迫ったのだ。
オバマ氏はシカゴの人権派弁護士として頭角を現したというキャリアを持つ。いかにも法曹家の交渉という印象を受けるビジネスライクな態度は、日本の経済学者からも問題だと指摘されたほどだった。
その一方、日本がアメリカに課していた豚肉や牛肉の関税率は正確な数字を暗記していた。TPPの交渉では農業の自由化が重要な位置を占めていたからだ。
『安倍晋三回顧録』によると、安倍氏がすきやばし次郎を会食の場所に決めたのは、外務省の推薦だった。一方、トランプ大統領が2017年11月に訪日した際は、安倍氏が自分で店を選んだ。
和牛を堪能したトランプ大統領
《トランプ米大統領が17年に来日した時は、彼、肉好きで、かつ派手な場所が好きだから、鉄板焼きにしようと。だから私の考えで銀座の「うかい亭」を選びました。店選びに私が関与していることが先方に伝わると、話もスムーズに進みます》
二人が舌鼓を打ったのは但馬系黒毛和牛ステーキがメインのコースで、税込み3万2400円。実はトランプ大統領、ステーキにケチャップをかけて食べるのを好み、これはアメリカ国民の間でも賛否両論あることで知られている。
うかい亭もケチャップを用意していたそうだ。しかし、しょうゆ仕立てで乾燥ポルチーニの香りを加えた自慢のトリュフソースでステーキを食べたトランプ大統領は「マーブル状できめ細かい。米国では見ない肉だ」と絶賛した。
こうして見ると、オバマ氏とトランプ大統領は本当に対照的な二人だと分かる。そして安倍氏はオバマ氏を苦手にしていたようだ。
オバマ氏が韓国に移動すると、4月25日の夜に安倍氏は麻生太郎氏や菅義偉氏と都内のステーキ店で食事を共にした。慰労会ということだったのだろう。
その席で安倍氏はオバマ氏と共に過ごした時間を「仕事の話ばかりだった」と愚痴をこぼしたことが明らかになっている。ビジネスライクな態度に辟易したというわけだ。
それでは石破首相とトランプ大統領の相性はどうなのだろうか。読売新聞オンラインは4月11日、「トランプ氏『日本はアンフェア』自動車巡り強弁…石破首相は反論の衝動抑え打開策探る」との記事を配信。トランプ大統領が自動車貿易の不満を石破首相にぶつけたという緊迫した場面を伝えた。
[3/4ページ]



