「アメ車を輸入しろ」と迫る米大統領を黙らせた「安倍晋三元首相」の鮮やかすぎる返答…“悲劇の宰相”存命ならトランプ関税にどう対峙したか

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安倍首相とオバマ大統領の人間関係

《安倍元総理が生きておられたら、ちゃんとトランプ大統領にこの700%なんて違いますと。これどういう根拠なのかよく聞いてくださいと言ってもらえたんじゃないかなと感じていることは、ちょっと付け加えておきたいと思います》

 とはいえ、あくまでトランプ大統領は「安倍氏なら24%の相互関税を賛成してくれた」と主張するために安倍氏の名前を出したのだ。果たして安倍氏が存命だったとして、トランプ大統領の“暴走関税”を止められたかどうかは分からない。

 アメリカ大統領選が近づくと、日本では「もしもトランプ氏が大統領に再選されたら」を略した「もしトラ」という言葉が流行した。これを援用すれば、今は「もし安倍」が話題になっているということになる。この問題をどう考えたらいいだろうか。

「もし安倍」を考える際、トランプ大統領が3月12日にホワイトハウスで記者団に語った内容は重要かもしれない。日本とアメリカの自動車貿易に関し、「我々は素晴らしい車を製造しているにもかかわらず、日本人は我々の車を受け入れない」と強い不満を口にしたのだ。

 実は安倍氏が首相だった2014年、当時のアメリカ大統領だったオバマ氏が同じ論理で自動車貿易に関する強い不満を口にしている。

大統領に「アメ車は売れない」と言った首相

『安倍晋三 回顧録』(中央公論社)には2014年4月23日の夜、オバマ氏と安倍氏が都内の有名寿司店「すきやばし次郎」で会食し、アメリカ車の貿易問題について激しい議論を戦わせる場面が描かれている。同書から引用させていただく。

《店のカウンターで、雑談もせずにすぐに仕事の話になって、オバマが「安倍内閣の支持率は60%。私の支持率は45%だ。シンゾウの方が政治的基盤が強いのだから、TPPで譲歩してほしい」と言い出したのですね。その後も、オバマは「自分はこの店に来るまで、アメリカの車を1台も見ていない。これは何とかしてもらわなければ困る」と言うのです。「輸入しろ」と。私は「いや、アメ車に関税なんかかけてませんよ」と反論したが、オバマは「非関税障壁があるから、アメ車が走っていないんだ」と私に詰め寄るわけです》

《私は「ではちょっと店から出て、外を見てみましょうか。BMW、ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲン。いくらだって外車は走っている。でも、確かにアメ車はない。なぜかって、車を見ればすぐに分かりますよ。ハンドルの位置が違うんです。アメリカの車は、右ハンドルに変えず、左ハンドルのまま売ろうとしている。テレビのCMだって、ドイツ車メーカーはさんざん流しているけど、アメリカは流していません。東京モーターショーにも、アメ車は出展していないんだ」と説明しました。そして「そういう努力をしていただかなかったら、売れるはずがないでしょう」とたたみかけたのです。すると彼は黙っちゃいました》

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