こんなはずでは…節税狙いの「都内1K・3300万円」マンション投資で年48万円の赤字 35歳「サラリーマン大家」の末路

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不動産投資で「節税」になるのか?

不動産の収入は給与収入との損益通算ができるので、給与収入での所得税を減らすことが可能です。この点が「不動産投資で節税ができる」といわれる由縁です。

 Aさんは独身ですので、年収が700万円だと源泉徴収税は概ね30万円前後となります。

【Aさんの所得税(概算)】
(4)+(5)≒30万2500円(百円未満切捨)

(1)給与所得:700万円-180万円(給与所得控除)=520万円
(2)所得控除額:110万232円(社会保険料控除)+48万円(基礎控除)=158万232円
(3)課税所得:(1)-(2)≒361万9000円(千円未満切捨)
(4)所得税:(3)×20%-42万7500円=29万6300円
(5)復興特別所得税:(4)×2.1%=6222円

 不動産収入があっても、その収入を得るために経費もかかっていますので、不動産所得は不動産収入から経費を引いて計算します。

 Aさんの例に基づいてシミュレーションしてみましょう。

【不動産収入】
月9万円×12か月=年108万円

【経費】
減価償却費+税金(初年度は不動産取得税も加算)+ローン利息(建物分のみ)+マンションの管理費等など =年250万円
⇒不動産所得は、不動産収入-経費=-142万円

 この計算から、不動産収入が年間108万円あっても不動産所得の計算上は-142万円となることが分かります。

 不動産所得のマイナスは給与収入と損益通算ができるので、最終的な所得税が安くなり「節税自体は可能」ということになります。

 ただ年収700万円のAさんの場合、節税効果は年間で所得税約30万円の約半分ほど。年間の持ち出しが48万円であることを考えると、「なんのための節税か」という話になってしまいます。

ワンルームマンション投資は儲けることはできるのか

 東京23区内のマンション価格は居住用と投資用のどちらもかなり高騰しています。居住用はともかく、投資用の不動産は価格上昇した分だけ、儲かる可能性が低くなります。

 なぜなら、物件の売値が高くても、家賃はまだそれほど高くなっていないためです。また、投資用ローンの金利も日銀の貸出金利引き上げに伴い上昇が続いています。

 つまり、投資用の不動産ではなかなか儲からないのが現実と言えます。ましてや購入の際にローンを利用すれば余計に儲からないものです。

 新築ワンルームマンション投資に“カモられた”Aさんは、しばらくはマンションを売ることもできず、八方ふさがりの状態が続きそうです……。

寺岡孝(てらおか・たかし)
住宅コンサルタント。1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。これまでに2000件以上の相談を受けている。NHK名古屋「ほっとイブニング」「おはよう東海」などTV出演。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローンや不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』『不動産投資の曲がり角で、どうする?』(いずれもクロスメディア・パブリッシング)がある。

デイリー新潮編集部

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