こんなはずでは…節税狙いの「都内1K・3300万円」マンション投資で年48万円の赤字 35歳「サラリーマン大家」の末路

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毎年48万円の赤字が35年間

 Aさんは晴れて「サラリーマン大家」となったわけですが、購入から1年もしないうちに、なぜか月2万円の持ち出しだけでは済まない状況に気づいたのです。

【Aさん購入物件のシミュレーション】
ローン借入金:3290万円
家賃(月額):9万5000円
ローン返済(月額):11万2392円
管理費等(月額):1万2000円

収支(月額):-2万9392円

 投資用ローンは35年返済で、変動型の金利2.2%。物件の表面利回りは3.46%となり、決して高利回りとは言えません。

 さらには、このシミュレーションでは固定資産税など税金は考慮されていません。買った物件の固定資産税は概ね8万円から10万円はかかるので、税金を加味すると毎月の持ち出しは4万円程度となってしまいます。

 つまり、1年間で48万円程度の持ち出しが発生することが分かったのです。

 話は続きます。購入から2年が経過した頃、不動産投資会社から「家賃の見直しをする」旨の通知を受けました。買ったときは家賃が保証されると聞いていたため、「なんで家賃の見直しが?」というのがまず浮かんだ疑問でした。

 Aさんは最初に提示された家賃がずっと将来も続くと思っていました。しかし、物件を売った不動産投資会社は「サブリース契約で2年ごとに家賃の見直しがある」旨は説明の通りだと言い張ります。

 Aさんは「ひょっとしたら騙されたのでは」と思い始めます。

「赤字はローン返済が完済するまで続きます」

 不動産投資会社は新築物件を買わせるため、高い家賃設定で賃料保証のサブリース契約を結ばせます。ところがここに落とし穴が。不動産投資会社にしてみれば、その後に家賃改定をすればいいわけで、当初の家賃を多少高く設定していても、新築物件を買わせてしまえば利益を確保できる、というカラクリです。

 Aさんの物件は家賃の見直しでさらに月額5000円のマイナスとなってしまい、収支はますます悪くなってしまいました。

【家賃見直し後のシミュレーション】
ローン借入金:3290万円
家賃(月額):9万円
ローン返済(月額):11万2392円
管理費等(月額):1万2000円

収支(月額):-3万4392円

 固定資産税まで加味して考えると、持ち出し金は増える一方です。また、管理費や修繕積立金といったマンション特有の固定費はいずれ値上がりします。さらには、今後はローンの金利も上昇傾向となれば、赤字はますます増える一方に……。

 こんな状況がいつまで続くのかと不安に思い、Aさんは不動産の専門家に相談することにしました。

 専門家は、「赤字はローン返済が完済するまで続く」ということ、そして、

「年間の持ち出し48万円で計算すると、35年間のトータルでは約1680万円になる」

 と告げました。Aさんはショックを受け、「何のための新築ワンルームマンション投資なのか」と嘆きます。これではマンションを持っていても意味がないため「今すぐ売却したい」と方針転換することになりました。

 しかしながら、ローンの残債金額はまだ3200万円も残っていて、「今の市況ではとても残債の金額以上では売れない」と専門家に言われてしまったのです。

 新築マンションは市場価格の約2割高く値付けされているため、「中古物件」となった今、評価額は2,600万円程度が上限だろう、とのことでした。

 Aさんはまんまと新築ワンルームマンション投資の“カモ”になってしまったのです。

 ローンの残債金額と市場価格がイコールになるのは当分先のこと。仮に、10年待ってローンの残債金額で売れたとしても、その間の持ち出しは480万円。新車1台分のお金を無駄に使うことになってしまうのです。

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