アプリを開くとクラスメートの動画がずらり! 驚きの「卒アル」最新事情 「好きな写真を選んで編集する機能も」
卒業式の季節を終え、母校を巣立った者たちが手にした卒業・卒園アルバム。同窓会などにも必須のアイテムだが、その卒アルが大きな変貌を遂げている。
***
【写真を見る】スマホで動画が見られる! 驚きの進化を遂げた「卒アル」
卒アルを“パーソナル化”
「毎年約9000校、100万冊を扱っています」
とは、卒アル印刷・製本の最大手ダイコロ(大阪府枚方市)の松本秀作社長だ。全国の幼稚園から大学までを手がけ、30%弱のシェアを誇る。創業72年で現在の約100万冊は同社最高の受注数だというが、
「全国の小学校の52%は卒業生が50人以下で少子化の流れは顕著。取引先9000校で仮に卒業生が1人ずつ減っただけでも9000冊減になるわけで、危機感は持っています」
そこで「単価を上げるための付加価値」を付けるべくパーソナル化を打ち出し、シェアを伸ばしてきた。
最新技術を用いた1台2億~3億円の印刷機で作るハードカバーの上製本は、昭和の時代に比べてはるかに紙質が美しい。アルバムをめくると見開きに大きな個人写真。これが児童や生徒ごとに異なり、次からは共通のページとなる。
「デジタル印刷でページの差し替えが容易になったので実現できました。2016年に発表し、今では多くの学校で取り入れられています」
生き生きとした表情が見られる仕組み
さらに「モバイルツールに卒アルを」という昨今ならではの取り組みも。22年にデジタルの「卒アルモバイル」を発表。専用アプリを開くと、クラスメートの顔写真ならぬ動画が並び、一言コメントを発する生き生きとした表情や声、しぐさが見られる仕組みだ。
「アンケートでは“卒アルで見るのは自分の写真”という声が圧倒的でした。そのため、卒アル用に撮られたストック写真の中から、自分が写ったカットや仲の良い友人が写ったものを選んで表示させる編集機能を持たせたり、友人らと共有できたりするようにしました。モバイル版は、紙版からの置き換えではなく、紙版に加えて希望者に販売する学校がほとんどです」
卒アルモバイルがあれば、同窓会や街中で出会った級友の、忘れてしまった名前もさりげなく確認できる。
「動画文化全盛の中で、卒アルだけずっと“組み込まれた写真”というのでは時代遅れになる。今後、さらにデジタルの受注が増えると考えています」
個人情報の保護が叫ばれ、住所や電話番号の掲載など遠い昔の話。デジタルの活用で卒アルは中身を新たに今後も進化し続けていく。