記者団の真ん前で大粒の涙、しゃがみ込むと背中を震わせて号泣…「松山英樹」21年マスターズ優勝までに流した涙の記録

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突然しゃがみ込み、背中を震わせながら号泣

 2013年にプロ転向し、PGAツアーに挑み始めたら、「スロープレーだ」「マークの仕方がおかしい」などと周囲から次々に指摘され、「マナーが悪い」と批判もされた。

 だが、2014年にメモリアル・トーナメントで初優勝を挙げ、結果を出し始めると、そうした批判の声はウソのように鎮まった。勝てば官軍ということなのだろう。松山に向けられた好奇や嫉妬の目は、尊敬のまなざしへと変化していった。

 次々に勝利を重ね、2017年8月の世界選手権シリーズ・ブリヂストン招待を制して通算5勝を達成。その勢いのまま、翌週の全米プロでも優勝争いに絡み、松山のメジャー初優勝は目前だった。

 しかし、最終日の後半に入ると、松山はガラガラと崩れ始め、あれよあれよという間にジャスティン・トーマスに勝利を奪われた。そして、ホールアウト後は、日本メディアの大集団が待ち受けていたインタビューエリアにやってくると、その片隅で突然しゃがみ込み、背中を震わせながら号泣した。

 松山の悔し涙を間近で見たのは、それが2度目のことだった。

ゴルフに完璧はない

 苦い涙をたくさん飲んでしまったせいだったのか。それからの松山は、それまで以上にパーフェクトを目指すようになり、小さなミスにも怒りを露わにして、「あんなミスをしているようでは勝てない」と吐き捨てて見せるなど、いつもカリカリしていた。

 ゴルフはミスのゲームと言われる。ゴルフに完璧はないということは、松山が一番よくわかっていたはずである。しかし、たとえわかっていても、あんな悔しい想いは二度としたくないという意志が、彼を完ぺき主義者にしていたのではないだろうか。

 しかし、そうなればなるほど、優勝の二文字は松山から遠ざかり、2度目の悔し涙から3年が経過しても、彼は勝利を挙げることができなかった。

 転機となったのは、2021年から目澤秀憲コーチとタッグを組んだことだ。キャリアで初めてのスイングコーチとの二人三脚は、1人で苦しんで頑なになっていた松山の心を少しずつ解きほぐし、それが彼に冷静さや謙虚さをもたらしてくれたのだと思う。

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