「代表は快進撃」でもJFAトップ「宮本恒靖」会長の経営手腕は…「200億円ビル」売却がなければ赤字の「サッカー協会」 クラファン、新ブランド立ち上げも消えない“財政不安”
サッカー森保ジャパンがアジアでは敵なしの強さを見せつけて最終予選を突破、世界最速でW杯出場を決めた。日本サッカー協会(JFA)にとって、1998年フランス大会の初出場からこれで8大会連続のW杯である。さぞかし笑いが止まらないと思いきや、昨年就任し、2年目を迎えたJFA・宮本恒靖会長にとって頭の痛い問題がある。JFAの財政基盤の危うさである。
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JFAの財政基盤は盤石ではない。2024年度の決算でもそれが「数字」になってしっかり表れた。評議員会(3月30日)で発表された昨年度の決算は「10億7000万円の黒字(収入・232億6000万円、支出・221億9000万円)」。黒字なのになぜ? という疑問が湧くが、ここにはからくりがある。「保有していた自社ビル(JFAハウス)売却益による追加収入が今回も組み込まれている」(サッカー担当記者)。その額は31.0億。それがなければ赤字の可能性があった。
実はJFAでは2022年度決算で48億8000万円の赤字を出していた。「JFAにとっては一大事。経験したことのない額にどの協会幹部の顔も皆、真っ青でした」(前出記者)。この時は売却を決めたJFAハウスの修繕積み立て用の特定預金から45億3000万円を切り崩した。その際、「実際の赤字は差額の3億5000万円」と財政危機の火消しに躍起になっていたのが当時事務方トップの専務理事だった、宮本会長なのだ。
翌2023年度決算は73億の黒字。しかし、ここにもJFAハウス売却益のうち約89億円が含まれている。逆に言えば、それがなければ赤字だった可能性が高い。すなわち、JFAのここ3年の財政は、JFAハウスに関わる収益がなければ非常に苦しい数字となっていたことがわかる。
コロナ禍で暗転
2002年、日本中がW杯日韓大会に熱狂した。国内のサッカーバブルが頂点だった頃だ。当時代表だった宮本氏が鼻骨骨折をしながら黒いフェイスガードで出場、奮闘し続けたことで一気にネームバリューが上がった大会である。この大会はJFAに130億円を超える大きな黒字をもたらした。そこで翌年、日本サッカー界の悲願の一つでもあった自社ビルを購入。「場所は東京都文京区、三洋電機が所有していた地上11階、地下3階のビルを現金一括の60億円で購入しました」(JFA関係者)。しかし、潤沢だった財政が2020年からのコロナ禍をきっかけに暗転。「代表戦も無観客や入場制限が行われ、収入が激減した。また、同様の理由で経営が苦しくなった地方協会へ支援金を撒く必要があり、支出が膨らんだ」(同)
そうした苦境に浮かんできたのがJFAハウスの売却案である。60億円で購入した物件が不動産高騰の影響を受け、200億円近い値が付くことがわかった。コロナ禍で同ビルの使用率が20%を切ったこともあり、JFAは売却を検討。「JFAにとっては重要な不動産資産。赤字の穴埋めが必要なのは理解できるが、それを手放してしまって大丈夫なのかという声は地方協会の中からは強く上がっていました」(同)。しかし、背に腹は代えられない台所事情が優先され、2022年に売却された。売却益は年度を分けてJFAに入金されている。上述のように、その巨額の収益は一昨年度、昨年度の会計を支えたが、「その入金も今年度で最後になる」(同)。来年度以降はその収入が当てにできなくなるわけだ。
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