ニュースサイトは「長文の記事を読めない若者」とどう向き合うべきか 欧米メディアが直面する課題と“意外な打開策”とは
記事よりも動画の方が楽だから……。本当は「文字」を読まないといけないと思いつつ、気づいたら動画ばかり見てしまうという経験は、誰しも心当たりがあるのではないだろうか。それは海外でも顕著な傾向のようで、特に欧米の各メディアは「若者の文字離れ」に頭を抱えているのだという。世界のメディア業界をめぐって、今何が起こっているのか。権威ある二人のメディア研究者が明かす。取材・文=湯浅大輝(フリージャーナリスト)
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「当協会の2023年の調査によれば、世界のニュースメディア(デジタルを含む)の収入構造は、49%が読者から、40%が広告収入で、セミナー事業など他の収入源は11%に過ぎません。要するに、メディアは今も昔も『読者』か『広告主』からしか主な売上を得られないのです」
こう語るのは、国際ニュースメディア協会(International News Media Association)研究員のグレッグ・ピチョッタ(Greg Piechota)氏。ポーランドの全国紙で約20年勤務した後、英オックスフォード大や米ハーバード大で研究員を務めた経験がある。
「いくら商売が厳しいと嘆いたところで、今さら広告収入が豊富だった紙の黄金時代に戻れるはずもない。デジタル広告で稼ぐか、読者から直接お金を得るか、メディアの選択肢は二つに一つなのです」(同)
ニュースサイトが生き残るには……
一方で、日本では主流となっている「無料記事による広告モデル」は厳しい状況が続く。
ロイタージャーナリズム研究所(Reuters Institute for the Study of Journalism)研究員で英BBCのデジタルシフトに貢献した主要人物の一人、ニック・ニューマン(Nic Newman)氏は、無料記事の閲覧による広告で稼ぐ仕組みは「早晩行き詰まる」と予測する。生成AIを活用した検索が普及すると、無料記事は「(生成AIの)データ引用元」になるのがオチで、掲載元の出版社にはお金が落ちなくなるからだ。
「読者か広告」で稼ぐしかないのにネット広告はジリ貧──。こうした状況であるからこそ、ピチョッタ氏もニューマン氏も、ニュースサイトの生き残りは読者に直接課金してもらう「サブスク」にしかないと口を揃えるのだ。
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