日枝氏と金光氏の静かなる権力闘争が始まった ホリエモンは株主総会でどう動くのか
金光氏は面従腹背
社内事情に特に通じているフジ関係者Cが解説する。
「新役員人事案の可否も判断している。人事案の叩き台は金光氏の出身である経営企画局の側近がつくった。日枝氏と金光氏にとって損のない人選になっている」(フジ関係者C)
ここからが複雑なのである。
「日枝氏が辞任しないと、この難局は乗り越えられなかった。だから日枝氏は辞任を受け入れた。だが、金光氏の手を借りて復権するつもり。だから新役員人事を受け入れ、金光氏の続投を許した。一方で自分が戻りにくくなってしまうから引退の弁は出さない」(フジ関係者C)
ただし、金光氏の考えは違うという。
「このまま日枝氏に引退してもらうつもり。だから『これは金光氏のクーデター』と社内ではささやかれている。百戦錬磨の日枝氏もそれに気づいているが、右腕の金光氏がFMHから消えると復権が難しくなるので、容認している」(フジ関係者C)
いっそ金光氏が日枝氏を突き放してしまえばいいと思えるのだが、それは出来ないそうだ。日枝氏が2人以上の国内大株主と昵懇の間柄だからである。株式会社は株主のもの。株主の存在を抑えないと、思い通りにはならない。日枝氏と違い、金光氏は株主対策には長けていない。
現在は日枝氏と金光氏の静かなる権力闘争が始まったところなのである。ただし、2人の当面の目標は一致している。6月の株主総会後も金光氏がFMHに残ることである。
同じくフジ関係者Cによると、この目的を実現させるための対策の1つが「第3者委の報告の先手を打ち、新役員人事を公表すること」である。
そもそも新役員人事について遠藤氏らは「第3者委の報告が出たあと」としていたが、実際には金光氏と清水氏の主導で3月27日に発表。第3者委の報告は同31日だった。
清水氏は前倒しの理由を「第3者委の調査と経営刷新は別の観点」と説明した。しかし、フジ関係者Cは失笑する。
「第3者委が、人権意識が足りない企業風土に問題があったと認定しながら、どうして調査と新役員人事が関係ないのか(笑)」(フジ関係者C)
第3者委の報告はフジの想定を遥かに超える深刻なものであった。それが新役員人事発表の前に明るみに出ると、フジ社長を兼務した時期もある金光氏のFMH残留が難しくなってしまう怖れがあった。
だから新役員人事を第3者委の報告前に発表し、既成事実化を図った。さらに金光氏は批判をかわすため、代表権を手放した。
「役員としてFMHに残れたら、どうにでもなる。FMHの社長に就かせる予定なのが組みやすい清水氏なのだから、なおさら」(フジ関係者C)。
日枝氏が2017年に代表権付きの会長から取締役相談役に退いたものの、実権は手放さずに済んだのと同じ図式である。
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