「怒りを覚えた」トランプ氏がロシア産原油を巡る「関税宣言」 鼻っ柱を折られたプーチン氏は停戦を受け入れるか

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高金利と政府の財政赤字は懸念材料

 中央銀行はインフレ抑制のため、政策金利を昨年10月に年率21%と記録的な水準に引き上げたが、さらなる引き上げは時間の問題だと言われている。

 この引き締めに対し、企業経営者からは「現在の金利に適応するのが難しい。事業を拡大するより銀行預金をする方が儲かる」との恨み節が聞こえてくる。「金利支払い負担の増大により、企業倒産の大幅増のリスクに直面している」と指摘するシンクタンクもある。

 貸し出し金利の上昇は好調な消費にも打撃を与えつつある。

 今年の新車販売台数は前年比20%減の130万台程度になるとの見方が出ている。住宅市場でも同様の問題が生じており、今年の新築物件販売件数は昨年に比べて最大35%減少するとの予測がある。

 政府の財政にも黄信号が点滅している。

 ロシア財務省の発表によれば、昨年の財政赤字は3年連続で3兆ルーブルを上回る3兆4900億ルーブル(約5兆1600億円、暫定値)だった。財政赤字のGDP比は2023年の1.9%から改善して1.7%となったが、目標の0.9%を大きく上回った。

 様々な問題が顕在化していることから、国際通貨基金(IMF)はロシアの今年の経済成長率は1.5%増に減速するとしている。

ロシア経済のリスクは「原油価格の下落」

 ロシア経済はピークを打った感があるが、本格的な経済危機が起きる可能性は低いというのが一般的な見方だ。ウクライナ戦争を継続するために必要な経済資源を持っているというのがその理由だ。

 ロシアの最大の強みは豊富なエネルギー資源だ。エネルギー収入は歳入の3分の1を占めており、原油収入はとりわけ重要となる。

 同国の経済発展省と中央銀行が、2月4日のミシュスチン首相との会談用に作成した報告書は、原油価格の下落をロシア経済のリスクの1つと指摘し、1980年代の原油価格暴落が再来する可能性を警告したという。80年代の暴落は旧ソ連崩壊の一因となった。(ロイター2月14日・3月25日付)

 この報告書が価格下落の要因として挙げているのは、米国と石油輸出国機構(OPEC)の生産拡大だ。

 トランプ米大統領は米国内での原油生産の増加に躍起になっている。だが、関税政策が災いして、同国の石油企業はコスト高に悩まされつつあり、増産の余地は乏しい。OPECもロシアと同様、原油価格の上昇を望んでおり、今後も生産調整を続けることだろう。

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