妻とは別に「部下のスタッフ」と20年、都合のいい二重生活はなぜ崩壊…「怖くてたまらない」51歳社長の嘆き

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あっけなさすぎる発覚

 恭正さんの不倫に気づいたのは娘だった。彼が深夜に帰宅すると、たまたま娘がキッチンにいた。「お帰り」と言いながら、娘は近くに寄ってきた。

「おとうさん、石けんの匂いがするねと娘が言ったんですよ。こんな時間にお風呂に入ってきたの、と。ギクッとして黙っていると『私、知ってるんだよね』と続けて言った。『理央さん……だっけ、きれいな人だよね』って。大丈夫、おかあさんには言わないからといったけど、数日後、美冬が『離婚する?』と言い出した。娘がしゃべったんでしょう」

 家族にバレたみたいだと理央さんに伝えると、理央さんは淡々と「じゃあ、私たち、別れよう」と言った。いや、ちょっと待ってよと恭正さんはあわてた。それが約半年前のことだ。

「妻には離婚したくないと言いました。『ふうん、そうなの』と言われました。理央にも別れたくないと言ったんです。こちらも『ふうん』って。でもふたりともどことなく冷たくなった気がします。どちらにいても落ち着かない。急に居場所がなくなった」

「女性たちから捨てられることが怖くてたまらない」

 会話がないわけではない。美冬さんの態度は特に変化はないし、理央さんも行けば受け入れてくれる。だが美冬さんのおおらかで温かいまなざしは感じられないし、理央さんの心身から迸っていた情熱は薄まっている。

「ふたりとも別れ話を持ち出したのに、具体的にどうするつもりなのかがわからない。ふたりで、生かさず殺さず飼い殺しにしようとでも話し合ったんじゃないかと思うほどです。僕だけがいたたまれない気持ちになっている。本当はみんなで仲よくしようと言いたいけど、僕にその資格はないし……」

 彼自身はどちらとも別れたくない。それだけだ。今まで通りでいいじゃないかと考えている。こういう関係性の瑕疵は見て見ぬふりがいちばん無難なのだ。

 美冬さんも理央さんも精神的にも経済的にも自立しているから、恭正さんを責めて「どちらかを選べ」とは言わないのだろう。だが、ふたりにとって、彼の存在が急に霞んできたのも事実ではないか。自立した女性は、相手にすがるようなことはしない。

 無視はされないが愛情も注がれない。こんなことになるとは思ってもみなかったと恭正さんは言う。不倫をしても、妻も彼女も自分を受け入れてくれるはずだと考えていたのだろうが、そこまで女性は身勝手な男を許すほど甘くはない。

「朝起きたら妻と娘がいないんじゃないかと思うこともあります。僕は今、女性たちから捨てられることが怖くてたまらない。たとえ理央と別れても美冬と以前のような関係になれると思えないし、離婚したところで理央が再婚してくれるとも思えない」

 結論を出すのも怖いが、宙ぶらりんな今の状態も疲れてならない。僕はどうしたらいいんでしょう。恭正さんは急に疲れたような表情でそう言った。

 ***

 ともするとかなり「わがまま」を言っているようにも映る恭正さん。その影響は家庭環境、とくに母親の影響が大きいのかもしれない……。詳しくは【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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