妻とは別に「部下のスタッフ」と20年、都合のいい二重生活はなぜ崩壊…「怖くてたまらない」51歳社長の嘆き
キラリと光った彼女の「目」
理央さんは独身で、結婚願望はまったくないと言い切っていた。だがそのころもつきあっている男性はいたようだ。
「僕自身の気持ちが少し変わっていったのかもしれない。妊娠した美冬が母親らしさを増していくにつれて、僕の中ではかすかな違和感が生まれていったんです。僕のパートナーというより、子どもの母親という感じが強くなって。一方で、理央はあくまでもひとりの女性として僕の前に君臨していた」
パートナーが子どもを通して本当のパートナーになるとき、恭正さんはふっと脇見をしてしまった。そこにいたのは理央さんという「女」だった。子どもができたと彼が言ったとき、理央さんの目がキラリと光ったような気がしたらしい。
「そのころスタッフは理央以外にふたりいました。いずれも男性で、仕事熱心。僕と理央が男女の関係になったとしたら、スタッフの士気が下がるし、いいことはない。最初はそうやって現実を見て我慢していたんです。でも自分の気持ちを止めることはできなかった。母親の好きなように生きればいいという言葉が脳裏に響いていたし……」
理央さんとふたりで食事に行き、それとなく口説いた。理央さんはつきあっている人がいると突っぱねたが、そう言われればいわれるほど理央さんと親密になりたくてたまらなくなった。
「その時点では彼女のことがよくわかっていなかったけど、ただ強烈に惹かれてはいたんです。もめごとが起こったら仕事にも支障が出る。それでももっと親しくなりたかった」
「いろいろなことがあったようで、たいしたことはなかった」20年
半年ほどかけて理央さんを口説いた。理央さんは根負けしたように彼の誘いに応じた。実は理央さんは、知人の紹介で恭正さんと仕事を一緒にするようになってすぐに惹かれたそうだ。
「それからはひとり暮らしの理央の家に行ったり、一緒に外で食事をしたり。でも外泊はしなかった。申し訳ないけど、今は妊娠中の妻を優先させたい。それでもいいだろうかと理央に尋ねたことがあります。理央は『もちろん。あなたはちゃんと愛妻家でいて』って。すごいことを言うなあと思いましたね」
その後、娘が産まれ、美冬さんとは父と母という立場になった。娘はかわいかったし、かわいい娘を産んだ妻は愛おしかった。だが、それは恋愛の情熱とは違うものだった。娘は今年、21歳になる。その年月はまた、理央さんと過ごした時間と重なる。
「いろいろなことがあったようで、たいしたことはなかったんだと思います。だって美冬も理央も僕も元気で生きているのだから。理央は一度も、僕を束縛したことがないんです。美冬も同じ。娘が2歳のころ、急に熱を出したと保育園から連絡があったんですが、そのとき理央と一緒にいて電話の電源を切っていたんですよ。結局、美冬が無理して駆けつけたんだけど、僕を責めはしなかった。いろいろ言い訳を考えていたのに言わずにすんだということがありましたね」
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