「カエルは魚と鶏肉の中間のような味わい」 罪なき“ゲテモノ”を食べてみた(中川淳一郎)

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 よく「ナマコを初めて食べた人間はエラい」などと言います。見た目がグロテスクなものを最初に食した人への賛辞です。ウニやシャコなども同様に言われますが、グロテスクなる評価は主観的で、多くの動植物魚介類は調味料を適切に使えばおいしくなります。

 カレー用の肉は、たいてい牛か豚のサイコロ状に切った脂身の少ない肉です。ホロホロになるまで煮込むとおいしいものの、この3年半、一度も買ったことがありません。イノシシの肉がウマ過ぎるからです。

 佐賀県伊万里市の農家・金吾さんの保有する山荘で、地元の猟友会会長が捕獲したイノシシをさばく会に毎年参加します。ウマいです。秋に2回山荘を訪れて8キロほど肉をもらい、冷凍して毎度カレーを作ります。

 ジビエはクサいなどと言われるのは、下処理がうまくいってないからです。

 猟友会会長は、わなにかかったイノシシの後頭部にやりを刺し、一気に血を放出させ、その後、臓物を取り出して洗うなど処理は見事なもの。牛と豚の中間に位置するかのごときイノシシ肉が自宅に常備されていると、もはや牛と豚を買う必要はありません。イノシシ肉が滅多に売られていないのは残念です。

 他にもおいしい食材について。すみません。カエルです。初めて食べたのはタイのバンコク。骨ごと包丁で切り、オイスターソースで炒めたものに素揚げしたホーリーバジルを合わせる。水かきもキチンと(?)残っており、最初は不気味でしたが、やはりウマい。魚と鶏肉の中間のような味わいと歯ごたえです。

 いうなればスッポンに近く、フグやアンコウ的でもあるでしょうか。東京は高田馬場の焼き鳥店「鳥やす」や、渋谷の台湾料理店「麗郷」でも行くと頼むようになりました。タイ米とカエル炒めは非常に合います。「カエル丼」って案外、アリなんじゃないか。エッ、ないですか?

 日本米に合わせるのなら、「焼き鳥丼」と同様に甘めの醤油ダレと焼いたネギを載せて七味唐辛子をかけるだけ。そんな一品、ネットで話題を呼んで売れるのでは。ちなみに「カエル丼」を検索したら、カエルとオタマジャクシの「絵」をあしらった丼鉢が見つかりました。これはかわいいです。

 まだあります。野菜で美味なのがタイや中国で使われる花ニラと黄ニラです。

 両方とも日本で時々入手できます。豚肉やイカやエビ、厚揚げと一緒に炒めるとご飯に本当に合います。

 私の場合、近所の青果店が入手した際には電話をもらい、10束ほど買い付けるというホットラインを築いてまして、時々入手しては炒め物を作ります。

 前にも書きましたが、昨年秋から凝っているのはカラスミ作り。当初、定番のボラの真子(まこ)で作っていたところ、さすがに高い! 中型サイズで8750円です。その後は600円ほどのスズキの真子を買っていますが、十分イケます。餅に挟んだり、すりおろしてパスタにかけるだけで豪華な一品になりますよ。

 人間の勝手な印象でゲテモノに分類される動植物の側に元来、罪はありません。

 しかし、さしもの私もヘビは食べられないですし、ハブ酒も無理。理由は、ヘビの見た目が怖いからです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2025年3月27日号掲載

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