おらが町にはスタバは来なかった…誘致で賛否割れた埼玉・行田 “反対派に圧力”記事に取り下げ求めた市の怒り

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東京新聞報道に市が記事の取り下げを求める

 「市が署名者へ撤回届渡す」「市民団体反発『表現の自由侵害』」
 「『脅しと圧力感じた』」「職員、反対署名の発起人宅訪問」

 こんなセンセーショナルな見出しが躍ったのは、2024年12月27日付の東京新聞だった。

 記事は「市が『署名撤回届』を用意した」と報じたうえで、「駐車場を守る会」の発起人代表らを取材。撤回届について「市の圧力や脅しを感じ、怒りが込み上げる」などとする市民のコメントを紹介している。

 これに対し、先に触れた市の経緯説報告では〈反対署名をした市民に翻意を促す説得活動をしたのではなく、新たに整備が決定した駐車場のことや一部事実に基づかない要望書の内容の説明などを含め、正確な情報をお伝えしたもの〉〈(※編集注:東京新聞が見出しなどで指摘した)表現の自由を侵害したとは考えておりません〉と、報道に真っ向から反論していた。市は東京新聞に記事の取り下げを求めていたといい、深刻な事態となっていた。

出店求め2000名署名

 昨年末に「駐車場を守る会」が解散したのは先述のとおりだが、これを「行政の脅しで解散させられた」と主張する市民団体「行田の明日を考える会」が反対運動を受け継いだ。

「考える会」は、昨年12月に行田市長や職員が「駐車場を守る会」の発起人らの自宅を訪問したことについて、「市と協定を結んだ企業が出店しないことになれば、損害賠償金が発生すると脅され、解散を要求された」と主張。一連の経緯を〈問題点〉としてまとめた文書「埼玉県行田市における忍・行田公民館駐車場に出店について再検討のお願い」を、「スターバックス コーヒー ジャパン」の水口貴文社長宛てに送付した。結果、2月から着工予定だったスタバの工事は、一部のボーリング調査を行っただけで、中止されたままとなっていた。もっとも「考える会」は、出店予定地そばの交差点が朝夕のラッシュ時を中心に混雑することも踏まえ、「別にスタバの出店に反対しているわけじゃない。古墳のある埼玉地区など道路が混雑しない場所にも出店できるところはある」とも主張していたのだが……。

 一方で、市民からは「スタバの出店どうなったの?」との声も出ていた。有志による「出店を求める市民の会」は2000人を超える署名を集め、出店を求める嘆願書を2月19日に行田市長に提出した。

 今年の3月議会では、行田市長がスタバ問題の状況を説明。市民の不安を打ち消そうと躍起だった。「何とか出店に向けて頑張ってくれ」「一部の反対の声だけで出店できないなんて。応援します」といった意見が市側に寄せられていた。

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