マクドナルドにウォルマートも…米大企業が「多様性推進」見直しへ 相次ぐ方針転換の理由は

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きっかけはトランプ大統領の誕生

「DEI」という言葉をご存じだろうか。ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公正性)、インクルージョン(包括性)の頭文字からとった略称だ。

 もっとかみ砕いて説明すると、女性の管理職登用に目標値を設けたり、(同性婚など)性的マイノリティーの権利を企業が積極的に認めたりすることだ。LGBTQや女性の登用、障害者差別や人種差別の禁止を促したものだと考えればよい。欧米企業の多くが導入しており、取引先にDEIを求めている会社もある。

 一見、聞こえがいい言葉だが、ここにきてアメリカではDEIをやめたり見直す企業が続出している。例えばマクドナルドでは管理職の30%以上を「過小評価されている人たち」から登用していたが、1月6日に目標設定をやめると発表。取引先にDEIを誓約させることもやめる。

 世界最大の小売業・ウォルマートもDEIという用語の使用をやめ、取引先に求めていた「人種・性別の考慮」を中止(読売新聞1月17日)。他にもフェイスブックを運営するメタ社が採用活動で多様性の配慮をやめると報じられた。こうした動きはトランプ大統領の誕生が大きい。同氏は大統領選でDEIの政府プログラムを終わらせることを公言していたからだ。

DEI推進が生んだ“不都合な現実”

 作家の橘玲氏が言う。

「企業がDEIに取り組んでいるという姿勢を示すためには、コンサル会社に頼んでセミナーを開くのが手っ取り早いわけです。ところが、セミナーに登場する講師の多くが白人だったりコンサルの経営者まで白人ばかりだったりする。また、DEIを推進しても逆効果というデータも出てきています。ライセンス効果といって、セミナーを受けたことで “許された”と思い込んでしまい、無意識に差別的な言動を取ってしまうのです。アメリカでDEIの見直しが起きているのは、多くの企業が不都合な現実にぶちあたっており、やめるタイミングが欲しかったからなのでしょう」

 日本でも、経団連などが積極推進しているDEI。だが、本家アメリカの“手のひら返し”に対し、たとえば米系企業の日本マクドナルドに聞くと、意外な返事が。

「当社も確かにマクドナルドの名が付きますが、米国本社の持ち分は約35%。それもあって日本マクドナルドとしては、米国に合わせることもありません」(広報担当者)

 外資系の方が、摩訶不思議なDEIの正体を、よく分かっているのだろう。

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