フジテレビのCMを「AC」が席巻中…“世間の反発”に“クライアントへの配慮”まで非常時の「CM裏話」
ACのCMを見ると震災のトラウマが
芸能界を引退した中居正広さん(52)の9000万円女性トラブルをめぐり、社員が関与したとも報道じられたフジテレビ。すでに75社を超える企業のCMがACに差し替えられた。出稿企業からすれば、反社会的な行為に関与した疑いのある放送局を容認し、資金を提供していると捉えられてしまうのはたまったものではない。
【画像】あまりにもほんわかすぎる中居くんの“お詫び”が掲載された事務所の公式ページ
ネットでは「フジテレビを見るとACだらけになっている」といった書き込みが多いが、関東の全民放のCMがACで埋め尽くされた2011年3月~4月を思い出す人も多いようだ。
それまでは広告主企業が不祥事を起こした際、ACに差し替えることが多かったが、この時は違った。東日本大震災の被災者感情に配慮し、楽しそうな内容のものや「新生活応援キャンペーン」といったものを流すのは不適切である、といった理由から差し替えた。
これに似た状況と呼べるのは、昭和天皇の容体が悪化した1988年9月から崩御された1989年1月までの期間であろう。社会全体が自粛ムードとなり、10月には井上陽水が「皆さん、お元気ですか」と呼びかける日産セフィーロのCMから音声が消えた。崩御に際してはACのCMも多数登場した。
東日本大震災については不可抗力ではあるが、この時ほどACのCMが社会に注目されたことはないのではないか。あまりにも流れ過ぎた結果、「ACのCMを見ると震災のトラウマが蘇る」という声も出るほどである。
ポポポポーン
その時、頻繁に流れたのは詩人・金子みすゞの詩を基にした「こだまでしょうか」がまず一つ。そして仁科亜季子・仁美の母子による乳がん・子宮頚がんの啓発・検診を促進する「大切なあなたへ」だ。これについては「放送回数が多過ぎる!」といった苦情がテレビ局に寄せられた。仁科仁美はブログで何もできないことへのもどかしさを吐露したうえで、「今回の災害の状況、日に日に大きくなる被害や被災された方々の事を思うととても複雑な心境です」と説明するに至った。
そして、なんといっても「ポポポポーン」で知られる「あいさつの魔法。」である。「おはよウナギ」「こんにちワン」「ありがとウサギ」「さよなライオン」「ただいマンボウ」「おやすみなサイ」などの挨拶にまつわる動物キャラが登場し、終始笑顔の「あいさつ坊や」と「あいさつガール」が「ポポポポーン」のナレーションの際に両手でハイタッチをして挨拶の重要性を啓発するものである。
基本的に愉快な内容で、社会的には正しいことを述べているのだが、あまりにも頻繁に放送されたため、批判の声も多数ネットに書き込まれた。この3つのCMがACにおいて大きなインパクトをもたらしたが、ポポポポーンについては、実社会でも2つの印象深いエピソードがある。
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