「角栄さんの財布は万札でパンパン」 閉店した国会内の理髪店・女性店主が明かす歴代首相の秘話
万札でパンパン
独立して「職員理髪」を開く時も、常連の“センセイ”が力になってくれた。
「あの福田赳夫さんが“面倒を見てやる”と保証人を引き受けてくれたんだ」
現自民党幹事長代行を務める福田達夫議員の祖父にあたり、首相も務めた大物だ。その性格はというと、
「とにかく時間に正確で、散髪にも遅れたことがない。時計の鐘が鳴ったらすぐ現れるから“消防ポンプ”ってあだ名を付けていたんだよ」
福田元首相と「角福戦争」と呼ばれる激しい政争を展開した、田中角栄元首相も常客だった。
「角栄さんはとにかく豪快な人だったね。新潟から地酒をトラックで運んできて、ケースごと差し入れてくれた。いつも財布は万札でパンパン。ネックレスをプレゼントしてくれたこともあったよ」
「驚くような額のチップを」
その後も中曽根康弘や宇野宗佑、「注文が多くてカッコつけだった」海部俊樹、小渕恵三など、一時代を築いた宰相たちが店に通った。
「どの先生も奥さんの愚痴とか、たわいもない話ばかりしていたね。帰り際には驚くような額のチップをくれたり、良くしてくれた」
時代とともに議員の客は減っていったが、小鹿さんは「病気なんて一つも」したことがなく、最後まで店頭に立ち続けた。今後は趣味の温泉巡りをしたいと、退職後の暮らしに胸を躍らせている。
「国権の最高機関は、本当に最高の場所だったよ」
“選良”たちに選ばれ続けた、まさに名店だった。
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