国民的ヒーローから「元妻を殺した容疑者」に O・J・シンプソン氏の激動の人生

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 いかに名を成しても、スポーツ選手は引退後の生活の方が長いものだ。アメリカンフットボールのスター、O・J・シンプソン氏は1994年に元妻ニコールさんとその友人男性を殺害した疑いで逮捕され、人生が暗転した。

 写真は84年のシンプソン氏とニコールさんの仲むつまじい姿だ。12歳年下の白人、ニコールさんと77年に出会い、当時の妻と別れて85年に結婚。2児を授かるが92年に離婚している。ニコールさんはシンプソン氏の家庭内暴力を警察に相談していた。

 ニコールさんと男性はロサンゼルスにある彼女の自宅玄関先で刃物で襲われ息絶えていた。男性はニコールさんが常連のレストランのウエイター。彼は、ニコールさんの母が店に忘れた眼鏡を届け凶行に遭った。

 シンプソン氏は殺人容疑で逮捕状が出たことを知ると、友人の運転する車で警察車両から逃走した。その模様はテレビで生中継され、沿道にファンややじ馬が集まり声援を送る始末だった。

全米で大騒ぎに

 当時、共同通信のワシントン支局長を務めていた、春名幹男氏は振り返る。

「カーチェイスの段階から全米が報道に夢中となり、ショーのような大騒ぎが続いた。シンプソン氏が無罪を主張し陪審裁判が始まり、ドリームチームと呼ばれる腕利きの弁護団が結成された。マイケル・ジャクソンを担当した弁護士や心理学に長けた者もいて、いかに陪審員を引きつけるかの裁判技術が駆使された」

 血痕や手袋が証拠に挙げられ、シンプソン氏はアリバイを証明できなかった。

「事件捜査の重要な部分に関わっていた刑事が黒人を侮辱する発言を繰り返していたことが分かると、弁護側は人種差別問題を前面に出して証拠の信用性を問うようになった」(春名氏)

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