約97兆円「繰り上げ返済」増加の意味とは 底なし沼となった中国不動産危機、衝撃の裏側

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普通の家を買うのは大変過ぎる

 ちなみにSさんは5年ほど前に脱法マンションを買った。家に入れてもらったが、外装も室内もきれいで、正規の住宅との違いは分からない。何が脱法かというと、住宅建設が禁止されている、農村扱いの土地に建設されたという点。取り壊されても不思議ではないが、政府も住民の反発を恐れてそこまでの強硬手段に出ることは少ない。とはいえリスクがあることは事実なので、価格は安い。普通の家を買うのは大変過ぎると、Sさんは脱法建築購入の道を選んだというわけだ。

「ローンを組んでちゃんとしたマンションを買っていたら、今ごろ値下がりでめいっていたかもしれない。脱法マンションでよかった」

 と、満足げだ。

 中国不動産市場の低迷はなぜ起きているのか。「値上がりしないなら、無理に買う必要がない」という買い控えが広がっていることに加え、「未完成住宅化という落とし穴」、そして「住宅在庫過剰」もある。

 中国政府は2020年夏に、不動産デベロッパーに対して「三つのレッドライン」と呼ばれる規制を導入した。簡単に言うと、債務を縮小しなければ新規融資を受けられないとの内容だが、目いっぱい借金をして、どんどんマンションを造るというイケイケドンドンの経営をしていた不動産デベロッパーにとっては全面的な方針転換を迫られる内容だ。先日、香港の裁判所から清算命令を受けた恒大集団(エバーグランデ)を筆頭に多くの不動産デベロッパーが資金不足に陥り、下請け業者への支払いができなくなって、マンションの建設が途中でストップ……という問題が多発している。

 有料版では、中国の知られざる「不動産危機」の構造を読み解き、その衝撃の裏側を高口氏がレポートする。

デイリー新潮編集部

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