料理をしたら文句、カード明細で発覚した闇…そして、妻との関係が決定的に壊れた“出来事”とは【悩める60歳夫の告白】

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蘇る当初の不安

 専業主婦という立場が嫌なら、パートにでてもいいし何か趣味を始めてもいい。好きなように自分の人生を生きてみればいいと彼は妻に言った。だが妻は、自分が何をしたいかわからないと答えるだけだった。

「できれば高校までは公立でいいと僕は思っていたから、周りのママ友がお受験と騒いでも、妻はその仲間に入れない。でもママ友の輪に入るためのお受験じゃないしね。なんだか彼女は周りに流されやすいというか、流されたいタイプなんだろうなと思いました。時流に乗り遅れるのが怖かったのかもしれない。彼女とは議論できないと思った結婚当時の不安が蘇りました。うちはうち、よそと同じことをしようと思うなとよく言ってはいたんですが。その代わり、子どもたちがやりたいことはできる限りやらせましたよ。娘にはピアノやサッカー、息子には野球や水泳、本人がやりたいと言えば何でも。続けられなくてもいいと思っていた。ちょっとかじって、嫌ならやめればいい。そのうち好きなものが出てくるはずだから」

 妻はそうではなかった。1度始めたら、ある程度うまくなるまでは辞めてはいけないという教育をしようとした。嫌な習い事などする必要はないと考える彼との間に温度差が広がった。

「それでもお互いに、子どものことがあるから我慢しなければという意識があったんだと思う。表だって口論はしませんでした。その分、不満がたまっていったとも言えるけど」

100万近くの謎の支払い…

 あるとき彼の家族カードの明細を見ていたら不審な使用歴があった。調べてみると、ホストクラブだった。1ヶ月で100万円近くが使われていた。あわてて前月の明細を見ると、10数万円支払われている。妻は家計を考えてうまくやってくれていると信じ込んでいたから、彼は詳細に明細を見る習慣がなかった。そのときはたまたま見つけたのだ。

「さらに前の月を見ると、行ってはいなかった。ここ2ヶ月のことだとわかりました。これはエスカレートする可能性があると思ったので、帰宅して妻に突きつけたんです。そもそも夜、当時、小学生のふたりの子を置いて出かけたのがどうしても気になって。出かけたいなら言ってくれれば僕だって早く帰りますよ。もし近所が火事になったり地震が起こったりしたら、子どもたちだけでどう対処すればいいのか。それが腹立たしくてならなかった。でも責めるような言葉は使いませんでした。これはどういうことなのと聞いただけです」

 すると妻は「私だって息抜きしたかった」と言った。息抜きがホストクラブか、と彼はため息をついた。苦労して事務所を持ち、妻には言わなかったが必死で働いてもきた。飲みに行ったり会合に出たりするのも多かったが、そこで人脈を作ってきたのも事実だ。がんばって働いて得た収入がホストクラブに使われていたらがっかりするのも当然だろう。

「お金を稼ぐって大変なことなんだよと、怒らず穏やかに伝えたつもりでした。でも妻は『もう行かないわよ。それでいいんでしょ』と。この人はどういう人なんだろうと、今まで知らなかった妻の一面に驚きました」

 彼は数日後、妻の実家へふらりと足を向けた。両親は東京郊外で仲良く暮らしているはずだったのだが、行ってみると家はあとかたもなくなっていた。

「ビックリしました。そんなの一言も聞いてない。帰ってから妻に尋ねたら、『ふたりともつい最近、施設に入った』って。どうして何も言ってくれなかったのと聞くと、『だって私の両親だから。あなたには関係ないでしょ』と。いや、教えてくれてもいいでしょと。妻に信頼されていなかったショックが大きかった」

 その後、彼は心にぽっかりと穴があいたような気持ちで過ごすことになる。

後編【大腸がんで「余命1年」と宣告され、不倫相手は逃げた…60歳夫が今になって知った彼女が消えた意外な真相】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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