「実力派プロデューサーも“一本取られた”」 コンプラを逆手に取る「不適切にもほどがある!」がテレビ業界を変える理由

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 チビ! ハゲ! ブス! キンタマ! 口汚い言葉が連発される、しかも地上波で……そんなドラマがまさかの好評である。かの「クドカン」作の連ドラ「不適切にもほどがある!」が話題沸騰中。とりわけテレビマンたちの支持が熱いというが、その理由は?

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 宮藤官九郎脚本で1月に始まった「不適切にもほどがある!」は、3月末で最終回を迎える。

 視聴率は同クールのドラマの中でもそれほど高くはないが、とにかくメディアに取り上げられることが多い。あのお堅い朝日新聞までも、「ドラマ『不適切』が映す時代」「宮藤官九郎のドラ 絶賛と反発」などとマジメに論じるほどで、今クール一の話題作となっているのは間違いないのだ。

 ストーリーをかいつまんで言えば、主役は51歳の中学教師・小川市郎。阿部サダヲ演じる小川は1986年の東京で体育教師として生徒をビシバシ指導しているが、ふとしたきっかけで現代にタイムスリップする。これもふとした縁で民放キー局の社員向けカウンセラーとなり、38年前、つまり「昭和」時代の“常識”に基づいた言動で周囲にドタバタを巻き起こす――そんな姿をコメディータッチで描いたものだ。

 小川は過去の世界では、野球部顧問でスパルタが信条。それもあってか、体育会系のノリで令和6年の時代でもタバコをヘビーに吸い、「アバズレ」「メスゴリラ」などと“放送禁止用語”を連発する。

 今のテレビ界では絶対にNGなワードの数々が、TBSの金曜日22時からの1時間だけは、まるでそこが解放区となったかのように聞こえてくるのだ。

視聴者に不快感を与えない理由

「これは今年を代表するドラマのひとつに数えられると思いますよ」

 とは、元MBSプロデューサーで同志社女子大学学芸学部メディア創造学科の影山貴彦教授である。

「数字以上に視聴者やメディアの心を揺さぶるものがあるのでしょう。確かに今の地上波ではなかなか放送できない言葉が出てきますが、小川がインテリではなくおっちょこちょいで、感情先行型のキャラクターに描かれている。彼が笑いをまぶしながら連呼しているので見ていて不快感を与えないんです」

 確かにこの手法なら怖いものはないし、お行儀が良すぎる今のドラマの中では、新鮮に映るかもしれない。

 加えて、

「ドラマの中で、小川が現代の価値観に疑問を呈する場面がありますが、そこはミュージカル調になっている。はじめはインド映画かとびっくりしましたが、一番説教くさく、重くなりそうな場面を柔らかくしているから、これもまた伝えたいことが軽やかに耳に入ってくるんです」(同)

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