急逝した「鳥山明さん」に「国民栄誉賞」は授与されるのか? アスリートは選ばれても“マンガの神様”は選ばれない“格差”の正体

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鳥山明の記念館の建設と原画の保存を急げ

 さて、話を鳥山明に戻そう。鳥山の漫画家生活は45年に及び、描かれた作品も膨大な量になる。気になるのが、残された原稿の行方である。既に関係者の間でも水面下で議論が起こっているかもしれないが、急いで保存管理を進めて欲しいし、散逸することだけは絶対に避けたいものだ。ネットでは「鳥山の記念館が建設されるべき」という声が上がっていたが、大賛成である。その際には、原画の収蔵機能も持たせてほしいし、公開する体制を作るべきであろう。

 漫画の原稿に関しては、「横手市増田まんが美術館」のような保存施設はあるものの、キャパシティに限界がある。何より、日本にはたくさんの漫画家がいるし、これまで描かれた原稿の量を考えると、収蔵施設は全然足りないのである。里中満智子が建設を提案した「国立メディア芸術センター」が、民主党政権下で“国営漫画喫茶”などと揶揄されて頓挫したのは、痛恨の極みであった。当時の政治家の文化への関心の低さがよくわかって悲しいものだが、今ならまだ間に合う。国レベルで保存体制を整えるべきであろう。

 鳥山の作品は漫画界の至宝である。そして、創作の苦労の跡が感じられる鳥山の原画は、世界的な文化遺産と言っていいし、展示公開する体制を作れば、日本の新しい観光名所になり得るのではないだろうか。国は早く文化財に指定するなどして散逸を防ぎ、後世に伝えてほしいと強く願う。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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