熟練の技「マグロの目利き」がスマホひとつで簡単に…“電通マン”が開発「仲買人の目をAIに置き換えた」アプリの実力

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「これはうまそうだ」――。そう思って鮮魚店でマグロの刺し身を手に取り、自宅で食べたら「あれっ、失敗したな」と、がっかりした経験がある人は、少なくないのではないか。解凍された冷凍マグロが店頭に並べられていると、少し白っぽいところなどを、脂が乗っていると勘違いしてしまうことがある。マグロのうま味は決して脂の乗りだけではないが、素人目には一見しただけでおいしさを判断するのは難しい。その結果、残念な気持ちになったという苦い思いをきっかけに、マグロの目利きの常識を覆した人物がいた。【川本大吾/時事通信社水産部長】

「マグロは博打なんだよ」

 それはマグロ漁師でも魚市場の仲買人でもなく、広告最大手の電通のクリエーティブ・ディレクターである志村和広氏だ。彼はマグロを「当たり外れなく、いつも美味しく食べるにはどうしたらいいか」と思案した挙句、人工知能(AI)を活用した目利きに可能性を見出した。これまで特にマグロの目利きを学んだ経験がなかった志村氏だが、「(移転前の)築地市場のニュースで、仲買人がマグロの尻尾を眺めながら品定めする光景を見て、その目をAIに置き換えられないかと思った」と打ち明ける。

 マグロの目利きと言えば、まさに熟練の技。瞬時にスマホで判定するとは至難の業としか言いようがなさそうだ。それもそのはず、国内外からマグロが集まる東京・豊洲市場(江東区)で長年にわたってマグロを取り引きしてきた仲買人は「どういうマグロを選んだらいいかって? 正直50年やっても分からないよ」と言い放った。

 このベテラン仲買人によると、

「マグロの良し悪しは、まず全体のふっくら感。それに尾の断面、腹の中などを見て、いろんなことを感じ取る。脂の乗り具合だけでなく、身の縮れ、しっとり感、赤身の鮮明さ。ただ、赤身がくすんで見えても切ってみたら、中はいい色していることもある。加えて、大事なのは“色変わり”。それは切ってから数時間立たないと分からない。口では説明しきれないほど、マグロは博打なんだよ」

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