満期出所した「雨イジングスパイダーマン」が「被拘禁者をサポートしたい」と話すワケ… 逮捕時に“Twitterでトレンド入り”「ネカフェ暮らし」「家なし・仕事なし」の過酷な現実

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「あんた、指名手配されてるわよ」

「取り調べ時に刑事が言っていた“私の指紋”はその後の公判でも証拠提出されることはありませんでした。有罪の決め手になったのは防犯カメラの映像と、私のものだとする血液のDNA鑑定の結果です。ただ窃盗現場近くの防犯カメラの映像は不鮮明で、血液についても現場検証記録に記載されておらず、事件から相当の日数が経っていたにもかかわらず色調(経時)変化が見られない不自然なものでした。私や弁護士は証拠能力に疑義を唱えましたが、認められることがなかったのはお話しした通りです」(堀口氏)

“それでもやっていない”と主張する堀口氏だが、逮捕・収監によって「人生がボロボロ」になったことは否定しない。

「自分が犯人と疑われていることを知ったのは、母親からの『あんた、指名手配されてるわよ』との電話によってでした。その前に大阪の実家に新宿署の捜査員が訪れ、『窃盗事件で息子さんに逮捕状が出ている』と告げられたそうです。当時、私は自営で塗装業を営む傍ら、休日などに銀座と新宿でバーテンダーをやっていました。“28歳で自分のバーを出す”と決めて貯金もしていましたが、突然の逮捕で業者への補償などが必要になり、400万円近くの出費を強いられた挙げ句、貯金もほぼ底をつきました。そのため出所後も住居が見つかるまでは“24時間3000円”のネカフェを利用せざるを得ない状況です」(堀口氏)

容疑者に浮上した理由

 堀口氏が「容疑者」として捜査線上に浮上するキッカケとなった出来事は、事件の半年前に起きたという。

「18年10月、私は新宿で健康保険証も入っていた名刺入れを落としました。実は未起訴となった“雨イジングスパイダーマン”事件の現場の一つで不審者が警察官に職務質問されていて、その時、その人物が私の健康保険証を示して『ホリグチユウキです』と名乗った。私の名前は裕貴と書いて“ヒロキ”と読むのですが、保険証にはフリガナがふっていないので間違えたのでしょう。公判で私はその職務質問した警察官を証人に呼んで『それは私でしたか?』と訊ねたのですが、警察官は『記憶にないので分からない』と答えるのみでした。こんなことをいまさら言っても仕方ないことは分かっています。ただ一連の経験から、私は“出所したら自分と同じように問題を抱えている被拘禁者をサポートする”と決意しました。といっても、事件の影響でいまだそのスタートすら切れない状況にあるのですが……」(堀口氏)

 世間の風当たりの強さを前に、発する言葉は力強くとも、その表情が晴れることはなかった堀口氏。つい最近、ようやく「審査中」にまで漕ぎ着けたアパートがあるといい、祈るような気持ちでその結果を待っているという。

デイリー新潮編集部

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