東京藝大「吉原展」が大炎上で大河「べらぼう」はどうなる? 「女郎屋の粋が出せるか心配」

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「誰も礼賛なんかしてないんじゃない?」

 とはいえ、当時の吉原がある種の文化の発祥地であったことは事実。

「そこまでヒステリックにならなくてもいいような気がするね」

 とは、演芸評論家の吉川潮氏である。

「何百年も前の江戸の世界の話について今の理屈であれこれ言っちゃ駄目ですよ。吉原がホントはどんな場所だったかなんて今時みんな知ってます。誰も礼賛なんかしてないんじゃない? 昔、吉原の料理屋さんで花魁ショーってやってたの知ってる? はとバスのコースに入っていたりしてね」

 それがいつしか運動家の批判に遭い、コースから外せとまで迫られたという。

「それと同じ臭いを感じるな。だいたい批判する人たちもさ、人身売買だなんだって言うなら今の吉原に行ってみたら。女性の人権を言うならネットに書き込みするより前に、そっちに抗議してほしいなあ」

 落語にも歌舞伎にも遊郭を扱ったものがあるが、それにもケチが付けられかねない、というのだ。

「右翼の抗議を受けた井上ひさしは…」

「言う方も言う方だけど、主催者も情けないよね」

 と笑うのは、落語家で、その廓話(くるわばなし)もお得意の、快楽亭ブラック師匠。

「昔、井上ひさしのところに右翼から抗議が来た。その時“じゃあお前、歴代天皇の名前ぜんぶ言えんのか。俺は言えるぞ”と言って撃退したことがあった。美術展を主催するんだからそれくらいの気概を持たなきゃ。だいたいそんなこと言ったら来年の大河だって……」

 2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公は江戸時代のメディア王・蔦屋(つたや)重三郎。吉原で生まれ育ち、そのガイドブックを出して財を築いた出版人の物語だ。横浜流星演じる彼の人生をドラマにするには吉原の描写が不可欠だが、その描き方によっては炎上しかねない。

「こないだNHKのプロデューサーと話していたら、とにかくクレーム対応に神経を尖らせていると。そんなだから女郎屋の粋が出せるか心配だけど、まあ野暮な世の中になりましたね」(同)

 吉原炎上の火の粉は、今後思わぬところまで飛び火しそう。

週刊新潮 2024年2月29日号掲載

ワイド特集「世間に負けた」より

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