中国のEC最大手「アリババ」創業者「ジャック・マー」が沈黙を破った背景に「巨額特許訴訟」

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事前通関

 世界最大級のEC(電子商取引)事業者「アリババグループ」を創業したジャック・マー氏(59)。この数年、習近平政権に目を付けられ公の場から姿を消していた。無断で米国民の雇用創出を約束したり中国の金融行政を批判したからだ。その最中、ブルームバーグが「沈黙破ったジャック・マー氏、表舞台復帰か―アリババの未来に危機感」とのタイトルで、記事(2023年11月30日付)を掲載した。

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 記事の内容は、マー氏が突如、アリババの社内フォーラムへのスタッフの投稿に対して「未来のために改革をいとわない人々、どんな代償や犠牲もいとわない組織こそ真に尊敬される」といった回答を寄せ、アリババに軌道修正を促したというもの。

 なぜ、マー氏は沈黙を破ったのか。事情を知る者らの間では、EC事業者としてのアリババの根幹を揺るがす「特許訴訟」の行方に懸念を示したからだと見られている。実は、その特許訴訟の行方次第では、アリババは莫大な代償を負わされるかもしれないのだ。

 東京・港区にある特許管理会社「BWB」が、アリババとそのグループ内で物流事業を手掛ける「菜鳥(ツァイニャオ)」(日本では「なとり」とも呼ばれる)に対し、特許権侵害差止請求訴訟を東京地裁に起こしたのは昨年4月のこと。

 中国のECビジネスに詳しい関係者によれば、この特許訴訟は、18年初めに中国が導入した「事前通関」の制度に関連している。

「個人間で海外から日本に商品を送る場合には、“EMS”(国際スピード郵便)を用いるのが一般的です。EMSの場合、簡易通関なので、税関で検査される商品は10%程度。それに対し、関税が課されるという仕組みです」

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