米国が誇る「強い個人消費」は本当に続くのか…最大のリスクは大統領選と“心理不況”の関係
相場を牽引する巨大ハイテク7銘柄
個人消費とともに米国経済の好調を象徴しているのが高株価だ。主要な株価指数であるS&P500種は史上初めて5000を突破した。
相場を牽引しているのは巨大ハイテク7銘柄だ。「マグニフィセント・セブン(MAG7)」とも呼ばれ、アップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラで構成される。この7社の株式時価総額は12兆ドル(約1800兆円)で、日本、英国、カナダの時価総額の合計に匹敵する。
だが、一握りの企業が相場を押し上げる構図に対して警戒感が強まっている。
2月に入り、市場関係者から相次いでテスラを問題視する見解が示されている。昨年第4四半期決算が4四半期連続の営業減益になるなど成長への期待が薄らいでいるためだ。
6社が人工知能(AI)を巡る熱狂に後押しされているのに対し、電気自動車(EV)分野のテスラは中国勢の台頭により厳しい状況に置かれている。そのため「マグニフィセント(素晴らしい、崇高な)という形容詞はふさわしくないのではないか」との声も上がっている(2月12日付ブルームバーグ)。
MAG7の一角が崩れることが契機となって市場全体が軟調になるリスクが生じているのではないだろうか。
国民が感じる雰囲気は景気後退に等しい
金融市場には商業用不動産市場という懸念材料がある。
現在の米国は高金利とオフィス需要の低迷により、商業用不動産の価値が急低下している。この状況下で、9000億ドル(約135兆円)以上の負債が今年中に借り換えを迎えることから、地方銀行が多額の損失を被ることが危惧されている。ブルームバーグの試算によれば、損失額は約800億ドル(約12兆円)に上り、約300行の地方銀行が支払い不能に陥る恐れがあるという。
大手銀行の被害は少ないとされているため、金融システム全体を揺るがす事態となる可能性は低いだろうが、米国経済へのダメージは無視できないだろう。
最も懸念すべきは、多くの米国人が不安を抱えながら日々を送っていることだ。
米ミシガン大学が発表した昨年12月の消費者態度指数は70と、コロナ前のピークを約30ポイント下回った。2022年6月の50を底に上昇傾向ではあるものの、2008年9月のリーマンショック前後に近い低水準から抜け出せていない。マクロ経済の良好とは裏腹に、国民が感じる雰囲気はリセッション(景気後退)に等しいのだ。
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