海外の研究で「肩こり」の根本原因が明らかに 「自分で治す方法」を専門家が解説

ドクター新潮 ライフ

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首をしなやかに動かす頸長筋

 さて突然ですが、ニワトリの胴体部分を持って揺するとどうなるか知っていますか? どれだけ動かしても、頭は空間上の一点にとどまり動きません。あたかも頭が固定されているかのようです。ハトも、首を突き出しては引っ込め、また突き出しては引っ込めという独特の歩き方をしていますが、あの動きも頭の位置を一定にキープするためのものです。人間も、バイクに乗って急カーブを曲がると体は大きく傾くものの、頭は地面と水平を保とうとします。

 いずれも、頭がいちいちぐらぐらと揺れてしまったら、空間認識や平衡感覚が保てなくなるので、それを防ぐための機能だと考えられます。こうした絶妙なバランスを保つことを可能にしているのが、首をしなやかに動かす働きをしている頸長筋です。アウターマッスルは首なら首、腕なら腕を力強く、そして速く大きく動かすことには長けています。しかし、頭の位置を保つような細かく、精密な動きはアウターマッスルだけでは無理で、インナーマッスルをしっかりと働かせなければなりません。

「水平あご引き」

 このように極めて重要な役割を担っている頸長筋を、先ほど説明した通りスマホを見たり、パソコンを使ったりしている時に、私たちはうまく働かせることができていません。それでは、どうすれば頸長筋をアクティベイトできるのでしょうか。そこで私がお勧めしているのが「水平あご引き」です。

 例えばスマホを見ている時、私たちの首は頭が下がって前に突出する姿勢になりがちです。いわゆるカメ首や猫背の状態です。この状態では頸長筋はあまり使われていません。代わりに、首の後ろ側にある脊柱起立筋や僧帽筋が、前に突き出た頭を支えるために緊張を強いられます。

 この状態が続くと、頸長筋を使わないことが常態化してしまい、「インナーマッスル→アウターマッスル」という協働が失われ、常にアウターマッスルだけで首を動かすようになる悪循環に陥ります。

数日で症状が改善することも

 そこで、前に突き出た頭を、あごを引いたままスライドさせるように後退させて、首の真上に頭が乗っかるようにする。すると、弛緩していた頸長筋が伸びてしっかりと頸椎を支えることができ、同時に僧帽筋などの筋肉への負担も減ります。

 見えない糸で頭頂部を上から引っ張られているような感じで背骨を伸ばす、もしくは座っている場合であればできるだけ座高を高くすることをイメージし、同時に肩甲骨を背骨のほうに寄せてみてください。ヨガやピラティスでよく言われるエロンゲーション(伸長)です。

 この水平あご引きを基本姿勢とします。そこから首を前に2回曲げ、また基本姿勢に戻って今度は後ろに2回反らせる。そして、やはり基本姿勢に戻してから、首を左右に2回曲げ、同じく基本姿勢から左右に2回回す。

 1分程度で終わるはずですが、これを1日2~3セット行います。数週間、人によっては数日行っただけで肩こりなどの症状が改善したという事例を私は多く見てきました。

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