海外の研究で「肩こり」の根本原因が明らかに 「自分で治す方法」を専門家が解説

ドクター新潮 ライフ

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正しい首の動かし方を脳に覚えさせる

 この一連の動きは、筋肉を鍛えるというよりも、正しい首の動かし方を脳に覚えさせるという意味合いが強いといえます。基本姿勢を取ることでまずはインナーマッスルである頸長筋を働かせ、そこからアウターマッスルを使って首を大きく動かす。首に負担を掛けない筋肉の動かし方を自分に学習させるわけです。

 また、水平あご引きを寝た状態で行い、そこから起き上がることも肩こり解消には大いに効果があります。

 枕を外して仰向けに寝た状態だと、床と首の間にすき間ができるはずです。その空間に手を入れてみるなどして、まずはできるだけ空間を狭くしようとしてください。必然的にあごが引けて首が伸び、寝た体勢での水平あご引きの状態が作れます。

 そして、あごを上げずに引いたまま頭を持ち上げ、肩甲骨が床から離れたところで5秒間その姿勢をキープし、あごを引いたままゆっくり戻る。これを朝起きた時に3回だけでいいのでやってみてください。一日の始まりから、正しい筋肉の使い方を体に確認させることができ、症状改善の効果が表れるはずです。

 さらに、万歳のように腕を上に持ち上げてから、掌を外側に向けてゆっくりと腕を開くようにして下ろしていくだけでも、肩甲骨を動かす菱形筋(りょうけいきん)が働き、猫背の改善につながるとともに、肩関節の可動域が広がるため、いわゆる五十肩(肩関節周囲炎)の症状も良くなることが期待できます。

「誰かに治してもらいたい」と思わない

 ここまで説明したような動きをすることで、何も特別な器具を使う必要はなく、また特殊な治療を行わなくても、肩こりの根本的原因である頸長筋の機能不全は解決可能です。

 いずれも1分もあればできることですが、それでも面倒くさいと思う人がいるかもしれません。つらい症状を抱えると、人間はどうしても「誰かに治してもらいたい」と思いがちです。しかし、頸長筋をアクティベイトすれば、肩こりは自分で治せるのです。にもかかわらず、他人の力に頼ろうとする……。

 そうした他人頼みを続けていくと、自分の体なのに自分で責任を持たないことになり、最終的には自らの健康を完全に第三者に委ねることにつながってしまいます。やはり、自分の体なのですから自らメンテナンスするという意識を持つべきでしょう。これを、スポーツ庁長官の室伏広治さんは「自分の体に対してオーナーシップを持つことが大切」と表現しています。

 つまり肩こり改善の処方箋も、すでに自分自身の掌中にあるといえるのです。

金岡恒治(かねおかこうじ)
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。1962年生まれ。筑波大学医学部卒業。同大整形外科講師を務めた後に、早稲田大学でスポーツ医学、運動療法の教育・研究に携わる。シドニー・アテネ・北京の五輪では水泳チームドクター、ロンドン五輪ではJOC本部ドクターを務める。『首・肩・腕の痛み・しびれ 自力で克服! 名医が教える最新1分ほぐし大全』等の著書がある。東京広尾のSPINE CONDITIONING STATIONにて、腰痛肩こりのセカンドオピニオン外来を実施している。

週刊新潮 2024年2月15日号掲載

特別読物「海外研究で根本原因が判明 『肩こり』『首痛』は自分で治せる」より

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