【アスリート撮影問題】ネット上でAIによる「アスリートの性的画像」が販売されている…醜悪なコンテンツをどうすべきか

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 性的な意図でアスリートを撮影する問題が注目を集めたのは2020年、共同通信の報道がきっかけだった。10月13日に配信された「JOC、性的画像の対策へ 被害拡大、女子選手が声上げ」との記事は、地方紙を中心とする多くの加盟社が転載を行った。

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 記事のポイントは、20年8月ごろに《複数の現役女子選手から日本陸上競技連盟のアスリート委員会へ相談があった。日本の女性アスリートが声を上げ始めた》という一文だろう。担当記者が言う。

「体の特定の部分を望遠レンズで狙って撮影することも珍しくありません。深刻な被害を訴える女性アスリートの声は、たちまち大きな社会的反響を呼びました。共同通信が記事を配信した約1カ月後の11月、日本オリンピック委員会(JOC)などスポーツを統括する7団体が性的な画像の撮影を《卑劣な行為》と断じ、被害撲滅を訴える共同声明を発表しました。さらに翌2021年には性的画像の問題で警視庁や千葉県警が合計3人を逮捕したのです」

 警視庁は21年5月10日、京都府の自営業の男を著作権法違反(公衆送信権の侵害)容疑で逮捕したと発表した。テレビのスポーツ番組で放送された女性アスリートの競技映像を切り出して静止画に加工。これを男が無許可で運営するアダルトサイトに投稿していた。

 千葉県警は6月21日、県内の会社員の男を名誉毀損の疑いで逮捕したと発表した。女子バレーボール選手を赤外線カメラで撮影した8分間の動画をアダルトサイトで販売していたことが直接の逮捕容疑だったが、県警の捜査では女性アスリートの動画を約30本、販売していたことが明らかになったという。

販売されている画像集

 だが、対策が強化されればされるほど“抜け穴”を探そうとする動きも加速する。その中で重要な役割を果たしているのが「AIグラビア」だ。

「『AIグラビア』は専用のアプリなどで利用が可能です。AI、つまり人工知能が画像データを学習し、使用者が生成したい“モデル”の顔つきやポーズなどを指示すると、その通りの画像を自動的に作成します。この技術を使えば、アスリートの性的な写真を人工的に作り出すことが可能になるというわけです。実際の画像は、よく見るとCGのような人工的な印象を受けますが、ぱっと見は本物の写真と区別が付かないほど精巧にできています」(同・記者)

 大手のアダルトサイトを閲覧すると、「AIグラビア」が作ったというアスリートの性的な画像集が1000円前後で販売されていることが分かる。末尾に「注意事項」があり、写真集に登場するアスリートは実在の人物ではないことや、20歳以上の年齢に設定していることなどが書かれている。

「とはいえ『画像集に登場するアスリートは実在しません』という但し書きを裏付ける明確な証拠はどこにもありません。実際に撮影した写真から“AIグラビア的な画像”を作成することも技術的には可能です。また、そもそも『AIグラビア』は画像データを学習する過程で、著作権のある写真やイラストなども参考にしてしまい、生成した画像が類似したものになる問題も指摘されています。AIに『アスリートの性的画像を作れ』と命じると、ネット上に拡散されている卑劣な写真を学習し、その類似画像を作成してしまうかもしれないのです」(同・記者)

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