「舟を編む」がNHKで連ドラに 描かれた“辞書編纂”の知られざる現場を三省堂・辞書出版部に聞いた

エンタメ

  • ブックマーク

「言葉を記録する」ことへの熱意

――「新しい言葉が生まれている」状況とそのスピード感を優先したのですか。

奥川:その通りです。国語辞典における1つの基準は、我々が日常生活の中で見聞きする言葉を広く取り入れることです。ただ、今はインターネットとSNSの普及により、言葉が生まれてから拡散されるまでの速度が非常に速くなりました。その結果、狭いグループ内で使われる言葉でも、グループ外の人たちが見聞きする機会はとても増えています。

 たとえば「ナウい」や「萌え~!」という言葉をあえて使って今の若い人たちにも再生産されるなど、意味合いや使用時のニュアンスも徐々に変わっています。またそれらは、使用するコミュニティや地域、使用者の年代などによっても異なる場合があり、常に生まれては消え変化している言葉と言えます。そうした変化の一端を本にまとめたいという思いは、言語研究者が方言や隠語の記録を残したいと考える感覚に似ているかもしれません。

――変化の激しい言葉を扱ったこともあり、「章立てが偏っている」「語釈が主観的」といった批判もありました。

山本:辞書の老舗である三省堂が“権威”となりえない辞典を作っていいのかというご意見もありました。裏返して言えば、それだけ当社の出版物を信頼していただいているという証であり、非常にありがたいことです。単行本の体裁をした「著書」である企画意図の発信を含めて、オタク文化への配慮や理解が至らなかったという反省点もありますので、さまざまなご意見を最大限に生かしながら、なんとか育てていきたい思いもありますね。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。