「日本や韓国は米国の価値観が『著しく劣化』していることに警戒すべき」 元パウエル国務長官の首席補佐官が語る「ウクライナとイスラエルの今後」

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 今年も昨年に引き続き緊迫した国際情勢が世界を覆っている。

 ロシアの侵攻から始まったウクライナ戦争は、すでに2年目。モスクワとの停戦交渉は事実上白紙化されたようで、多くの専門家はロシアが長期戦を覚悟しているとの見解を示している。

 一方、昨年10月7日のハマスのテロ攻撃が引き金となったガザ地区での紛争は、イスラエル指導部のハマス消滅計画を骨子とした全面戦争へと転換した。加えてイランの支援を受けるフーシ派の反政府勢力と武装組織ヒズボラの挑発により、中東の戦争はますます激化している。武力衝突はすでに周辺国に飛び火し、一歩間違えば列強の介入で世界大戦に発展する可能性も否定できない状況である。

 こうした不安定な情勢を、かつて米国の中枢にいた人物はどう見ているのか。

 元米陸軍大佐で、国務長官時代のコリン・パウエル氏の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン氏に中東・東欧戦争の行方と米国主導の同盟体制について聞いた。

米国の戦略的利益に合致しない戦争

 ウィルカーソン氏は現在、米バージニア州にあるウィリアム・アンド・メアリー大学で国際関係学の特別講師を務めているが、2003年、米国務長官コリン・パウエル氏が国連で「イラクの大量破壊兵器開発・保有」演説を行った際の首席補佐官だった。

 当時、イラク戦争に懐疑的な立場を持つ米政府関係者もいたものの、パウエル氏のあの有名な演説は、ネオコンが主軸だったブッシュ政権にイラク侵攻の大義名分を提供した。結局、イラクで大量破壊兵器は発見されず、米国は占領を続けた。

 ウィルカーソン氏は、ブッシュ政権の誤った選択に知らぬまま一役買ったことを痛切に後悔、反省している数少ない人物だ。こうした苦い経験をもとに、彼は政界を去った後も、国民を欺きイラク戦争を支持したネオコン派と軍産複合体を痛烈に批判している。

 ***

――ウクライナでの戦争が長期化する中、米国内では戦争に対する疲労感が高まっています。昨年12月、バイデン政権とヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の緊急要請にもかかわらず、米議会はウクライナへの追加資金援助を拒否しました。共和党を中心とする議員と有権者の多くは、ウクライナへの無条件援助に不満を抱いています。米国はウクライナに対する政策を変えるべきでしょうか?

 ご指摘の通り、米国のウクライナへの支持は減少しており、これは当然のことです。国際情勢に詳しくない米国の国民でさえ、この戦争は理不尽であり、あまりにも長期化していると感じています。その一方、状況により精通した国民は、この戦争が米国の戦略的利益に合致しないことを認識し始めています。

 明らかな事実は、ロシアが戦争に勝っており、米国の制裁によってロシアの経済が弱体化するどころか、むしろ強化されているということです。また、中国―北朝鮮とロシアとの間で暗黙の同盟関係が構築されている現実を認識しなければなりません。

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