AIを使った新作「ブラック・ジャック」に賛否の声…手塚眞氏が明かした「手塚治虫こそ優れた未来の生成AI」の意味とは

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手塚治虫が生きていたらどう思うか

――現在も手塚治虫が生きていたら生成AIを使ったかどうか、という議論もありました。

手塚:手塚治虫は、キャラクターは頑なに自分で描くと思います。ただ、背景を描いたり、ベタを塗ったり、枠線を引いたりといったアシスタントの単純な仕事は生成AIに任せたと考えます。手塚治虫がアシスタントを使った理由は量産のためなのです。締切がなければ背景まで全部自分でやりたい人ですから。実際、手塚治虫の職場はアシスタントの自由度が低く、背景などは指定通りに描くのが鉄則だったといいます。これなら、自分の作風を学習させた生成AIに任せれば便利だと思います。

――それは確かにあり得る話ですね。

手塚:手塚治虫は流行に敏感で、人気漫画のリサーチを怠りませんでした。今どきはどんな話が人気なのか、若い人はどっちの作品が好みなのか……とAIに相談相手になってもらっていたかもしれません。でも、意見をそのまま使うのではなく、あくまでもアイデアを考えるきっかけとして活用したと思います。

――もし手塚治虫が今回の「ブラック・ジャック」を見たら、気に入ると思いますか。

手塚:気に入らないに決まっていますよ(笑)。「フーン、これは生成AIの描いた漫画なんだね。よしわかった、あとで僕がぜんぶ描き直す」とか、言いそうじゃないですか。海外で出版された「鉄腕アトム」の海賊版を知った手塚治虫は、それに抗議するのではなく「出版社には手塚治虫が自分で描くと言ってください」と提案しようとしたそうです。常に新しいものに敏感で対抗意識を燃やす。手塚治虫はそういう人ですから。

――眞さんから見た、手塚治虫作品の魅力とはどのような点にあるとお考えでしょうか。

手塚:「ブラック・ジャック」は短い24ページの中に、いくつものテーマが複雑に絡んでいます。ラブストーリーと推理物を融合させるといった、複雑な内容が24ページで簡潔にまとまっていますし、これほど密度の高い物語を毎週考えていたわけでしょう。手塚治虫こそが、優れた未来の生成AIだと思う。今の生成AIは到底及びませんね。

人間にしかできない仕事とは

――眞さんは、「TEZUKA2023」の記者会見で、「生成AIは人間に取って代わるのではなく、創作をサポートすることでさらに人間の創造性を広げる」ことが理想と語っておられました。

手塚:生成AIはスタッフの一員だと感じています。今の生成AIはスピードと量は抜きんでているけれど、アートは創れませんから。そして、生成AIは人間の可能性を広げてくれるツールですが、今後は使う側のモラルも問われるでしょう。手塚治虫そっくりの絵を出力した人が家で飾る分には問題がないけれど、本物と偽って世に出したら、犯罪になってしまいますからね。

――そして、眞さんもクリエイターとして、様々なプロジェクトを推進しておられます。生成AIを扱ったことで、学びを得た点はありますか。

手塚:このたび、青梅で「Visualism-手塚眞アート映画集」という短編映画の上映会を行います。私が長年ライフワークで取り組んでいる短編のアート映画を集めたものですが、芸術的な方向に振り切った映画は21世紀になってから減少傾向にあるんです。手塚治虫も実験的なアニメを生涯にわたって作ってきました。こういった実験的な作品を生み出すことは人間ならではの創造性で、生成AIが絶対に真似できない領域だと考えています。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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