AIを使った新作「ブラック・ジャック」に賛否の声…手塚眞氏が明かした「手塚治虫こそ優れた未来の生成AI」の意味とは

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新作の完成度を手塚眞はどう見たのか

――「ブラック・ジャック」のシナリオを作るにあたっては、5組のチームを結成し、それぞれに生成AIを使ってもらったそうですね

手塚:漫画家ではない人も含めた5組で、生成AIで別々のシナリオを作成し、1本のストーリーを選びました。アイデア(プロット)やあらすじをつくる段階では、生成AIのスピード、何より物量は凄まじく、人間はまったく歯が立ちません。あらすじは5分あれば作れますし、それが気に入らないと指摘すれば、対案を5分で作ってくるのですから。ただ、そのアイデアがすべて面白く、優れているかというとまた別の問題です。膨大なアイデアから、人間が良いものを選び取る必要があります。

――出力されたシナリオの完成度はいかがでしたか。

手塚:5組がそれぞれ出力してきたプロットは甲乙つけがたく、ジャンルも多様で驚きました。ちなみに、「機械の心臓-Heartbeat MarkII」というタイトルは、生成AIが考えたんですよ。従来の「ブラック・ジャック」にないタイプのタイトルですが、メンバーが「自分の体がサイボーグになるストーリーを作ってくれ」と指示したら、これが出てきたらしいのです。

――なんと! あの印象的なタイトルは生成AIが作ったのですか。

手塚:さらに、手塚プロダクションのスタッフがあらすじを何度も出力させているとき、生成AI側から「手塚治虫はこういうふうには書かない」と意見が返ってきたと言うんです。なんとか、変えるようにと指示を出したそうですが。スタッフは「人間相手に会話をしているようで、後半には生成AIに愛着を感じるようになった」と振り返っています。

――そんな「ブラック・ジャック」の新作ですが、眞さんは手塚治虫本人の作品と比べてどう思いましたか。

手塚:正直に言いますと、物語はいろいろな要素を詰め込みすぎだと思いました(笑)。軸になるテーマが1話の中に3つくらいありますが、これは多すぎです。削りたかった箇所もあったのですが、関わっている人たちの思いが強くて、まとめきれなかったのは反省点です。改めて、手塚治虫の漫画はストーリーが整理されていて読みやすいと、実感しました。作家の意思を貫いてストーリーを創れるのは人間の強みだと思います。

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