AIを使った新作「ブラック・ジャック」に賛否の声…手塚眞氏が明かした「手塚治虫こそ優れた未来の生成AI」の意味とは

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実は、AIは忠実な絵が描ける

――絵に関しては生成AIではなく、手塚治虫の絵を忠実に再現する漫画家・つのがいさんが描いていますね。ネットでは生成AIが出力したイラストがたくさん見つかりますが、漫画の絵を描けるほどの技術はないのでしょうか。

手塚:いいえ。実は、生成AIは僕でも見分けがつかないほど、手塚治虫そっくりの絵を生み出せるのです。では、今回なぜそれを発表しなかったのか。今回の生成プログラムの一部にはアメリカが開発したプログラムを使っているのですが、生成AIの学習物の権利的な問題がはっきりしていないためです。プログラムが用いるデータに、いろいろな方の著作物が混ざっている可能性がある。それをもとに出力した絵の著作権はクリアできるのか。この責任の所在を明確にしなければ、商業的な雑誌には掲載できないのです。

――なるほど。研究室レベルでは絵が出せるものの、著作権的な問題があるわけですね。

手塚:そうです。実際には生成AIはいろいろなアングルの絵が出せるし、年をとったブラック・ジャック、太ったブラック・ジャックなどの細かい指示を出せば、それらしい絵が出力できるんですよ。僕が驚いたのは、手塚治虫と瓜二つと言っていいほど、忠実な線で絵を出してきたこと。想像以上の進化を感じずにはいられませんでした。

――眞さんは以前、生成AIに漫画のコマ割りをさせたいと話していましたね。コマ割りも生成AIはできるのでしょうか。

手塚:コマ割りも並行して研究を行っていたのですが、今回は間に合いませんでした。絵以上に高いハードルの一つです。手塚治虫のコマ割りは複雑なんですよ。シンプルな長方形や正方形だけはなく、内容に応じて斜めに線を引くこともあるので再現が難しいですね。対して、シンプルな4コマ漫画だったら作れるだろうし、キャラクターの位置や吹き出しの位置なども自動で設定できると思います。

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