支持急上昇の極右政党が「EU離脱」に言及…ドイツは長期不況の可能性が高まりすべてが良くない方向に進んでいる

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足元の経済が急速に悪化

 ドイツ政府は2月1日「昨年のビール販売量が前年比4.5%減の83億8000万リットルとなった」と発表した。1993年の統計開始以来、最も少ない数字だ。

「ビール大国」のドイツでも近年、飲酒を自制する傾向は出ているが、加えて景気の低迷が追い打ちをかけている。インフレのせいで個人消費が伸び悩み、昨年のクリスマス商戦は低調だった。

 ドイツ卸売・貿易業連合会は1月上旬「今年の卸売業者の売上高は名目ベースで2%減少する」との見通しを示している。昨年も3.75%減少しており、「景況感は『底』だ」と悲観的だ。

 昨年の実質経済成長率は、日本の2.0%増に対し、ドイツは0.3%減だった。昨年の名目国内総生産(GDP)はドイツが日本を抜いて世界第3位となったが、足元の経済は急速に悪化している。

「一人勝ち」からなぜ一転したのか

 ドイツ経済は高インフレが景気を圧迫するスタグフレーションの様相を呈しており、「今年も2年連続でマイナス成長」との見方が強まっている。

 ユーロ圏のGDPで3割を占めるドイツ経済はつい最近まで「一人勝ち」の状態が続いていたが、なぜ苦境に陥ってしまったのだろうか。

 ドイツ経済の屋台骨は自動車や機械・化学などの製造業だ。このため、資源高に起因するインフレやこれを抑止するために実施された欧州中央銀行(ECB)の利上げが製造コストや設備投資の負担増につながり、ドイツ企業にとって大きな足かせとなっている。

 その典型例は化学産業だ。原材料価格の上昇が利益を圧迫し、ドイツ化学大手BASFは昨年第3四半期の最終損益は2億4900万ユーロ(約400億円)の赤字となった。

ロシアからのガス調達を断念

 東ドイツを統合したことが重荷となって、1990年代のドイツ経済は低迷した。「欧州の病人」と揶揄されたが、安価なロシア産天然ガスの確保などで経済を再生させた経緯がある。

 だが、ウクライナ戦争を機にロシア産天然ガスの調達を断念したことで、ドイツの産業競争力は再び低下してしまったのだ。

 ドイツ製造業の要である自動車産業も苦戦している。ドイツ自動車工業会は1月29日、今年の自動車販売は前年比1%減の282万台で、新型コロナ前の4分の3の水準にとどまることを明らかにした。

 世界の自動車販売台数がパンデミック前の水準に近づくのとは対照的だ。ドイツの自動車企業を取り巻く環境が依然として厳しいことを示している。

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