「八代亜紀さんが僕の人生を変えた」世界的ギタリスト“マーティ・フリードマン”が悼む「彼女の歌声は神様が与えたもの」

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影響を受けた本人の前でプレイ「ここは天国?」

 八代さんの歌をきっかけに日本を知り、興味を持ったマーティは、カコフォニー在籍時に初来日し、この時の経験からすっかり日本が好きになった。独学で日本語の勉強を始め、2004年に東京へ移住。以後、日本を拠点にして世界に向けた活動を続けている。

 八代さんとは2006年に伝説の深夜番組「ヘビメタさん」で初共演。マーティがヘビーメタル調にアレンジした「雨の慕情」や「舟唄」を八代さんが歌った。この時、本番前の打ち合わせで忘れられない経験をしたという。

「椅子に座って、僕の斜め前、すぐ近くに八代さんが座っていて、僕が『こんな感じでどうですか』とギターを弾いたら、八代さんがそれに合わせて自然な感じで歌ってくれたんです。その歌声を聴いた瞬間、鳥肌がバーンと立ちました。歌声があまりにも素晴らしかったんですよ。僕は日本でも海外でも、いろんなボーカリストと演奏してきましたが、鳥肌が立つなんて後にも先にもありません。八代さんだけです」

 以後、八代さんとは度々共演し、レコーディングも共にしている。13年にはシングルとして発売された「MU-JO」という曲を提供した。

「曲を提供できたのは、考えられないぐらい嬉しかったです。レコーディングのギターダビングの時も、すぐ近くに八代さんが座って、僕がソロを弾くとすごく喜んでくれて、その姿が本当にかわいいからキュンときてました。そもそも僕のギターフレーズには八代さんの影響がまんま入っています。八代さんと同じスタジオに入って、八代さん本人に向けて、八代さんの影響が入ったフレーズを弾く……。これ、どういう世界なの? 僕は天国にいるの? と信じられない思いでいっぱいでした」

人の感情を歌声でコントロールできる

 実はマーティ、八代さんとの共演に感激するあまり、不思議な体験をしたことがあるという。“幽体離脱”したというのだ。

「13年に一緒に『LOUD PARK 13』に出た時です。僕は八代さんの横で演奏していたんだけど、八代さんと並んで一緒にやっている姿を客席側から見たいと思ったんですよ。だってこんな機会、そうないから見逃したくないじゃない。そう思っていたら、手は自動的に演奏して、魂のようなものが僕の体から抜け出して、客席側から見ていました。“幽体離脱”っていうんですか。だから僕の記憶には、客席側から見た僕と八代さんの姿がバッチリ残っているんです」

 このようにマーティのギタープレイばかりか人生まで変えた八代さんの歌声。改めて何がどういいのか、マーティに解説してもらった。

「低音だけど女性らしさ、セクシーさもあります。品もいい。そして優しいんです。お母さんが赤ちゃんに子守唄を歌っているような優しさがあります。あの歌声には八代さんの人間性がそのまま出ていますよ。初めて聞いた時に優しい人だろうなと思ったんですが、その後、何度も会って、優しいしやっぱり人間性と声がマッチしていると思いました。

 それにボーカリストとしての武器、技をたくさん持っています。お客さんやその場の雰囲気に合わせて、一番良いものを無意識に組み合わせて歌い、お客さんを感動させられるんです。彼女はきっと、お客さんを泣かそうと思えば歌で泣かすことができます。人の心に届き、感情を歌声でコントロールできる、それぐらいの技術を持っています」

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