紅白歌合戦 1部も2部も過去最低視聴率で浮き彫りになったNHKの苦しすぎる事情

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

 1部、2部ともに過去最低の視聴率だった2023年の「NHK紅白歌合戦」。コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)も落ちていた。一方でT層視聴率(13~19歳の個人視聴率)は突出して高かった。「紅白」は10代向け番組になったのか。※視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

コアも落ちたが、10代は高視聴率

 2022年の「紅白」の視聴率は1部が個人23.0%(世帯31.2%)で2部が26.0%(世帯35.3%)だった。2023年は1部が個人22.0%(世帯29.0%)で2部が個人23.5%(世帯31.9%)。個人は1部が1ポイント、2部は0.8ポイント落ちた。

 ちなみに個人1%は関東地区で約40.5万人。全国単位では同約118.5万人である。

 13歳から49歳に絞った個人視聴率であるコア視聴率も下がった。2022年は1部が19.3%、2部は22.7%だったが、2023年は1部が18.8%で2部は20.4%。2部は2.3ポイントも落ちた。

 一方で驚くほど高い数字を記録したのが10代のT層個人視聴率。1部は21.7%、2部は22.0%もあった。ともにコアより高い。かつては音楽番組を支えていたF1層(20~34歳の女性)の個人視聴率は1部14.9%、2部16.9%だったから、大幅に上回った。

 2023年3月22日の「ワールドベースボールクラシック 日本×アメリカ」(テレビ朝日)は、個人24.3%(世帯42.4%)でT層12.4%。日中の放送だったため10代は観にくかったが、同日午後7時からの中継録画(TBS)も個人14.0%(世帯22.2%)でT層は7.3%。背景には若者の野球離れもあるだろうが、今の10代はWBCより「紅白」らしい。

個人視聴率の下落は事前に承知か

 その分、しわ寄せも出ている。ターゲットを若者に絞りすぎたせいか、シニア層も含む個人も49歳までのコアも下がった。若者ウケ狙いの出場歌手の人選には多くの視聴者が付いていけなかったのだろう。

 筆者が見たところ、「紅白」に出場した歌手44組のうち、若者ウケを狙った人選はMISAMO(紅組)、Stray Kids(白組)など23組。ミドル向けは紅組の椎名林檎(45)、白組の藤井フミヤ(61)など10組。シニア向けは紅組の石川さゆり(65)、白組のさだまさし(71)など11組。若者重視の傾向は年々強まる一方である。

「紅白」が若者を重視したら、全体値である個人視聴率はおのずと下がる。人口約1億2500万人のうち、39歳以下は4715万人だが、50代から70代まではそれより多い4861万人いるのだから。この人選では個人視聴率が上がるはずがない。プロであるNHKもそれは事前に分かっていたに違いない。

次ページ:純烈の「NHKプラス」と若者重視は同根

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。