26人犠牲「北新地放火事件」から2年 30代遺族が告白「夫の命の価値が低いと言われているようで憤りと悲しみが」
夫の命の価値は低いのか
Aさんは、遺族たちが立ち上げた一般社団法人「犯罪被害補償を求める会」に入り、この問題を解決すべく行政など各所に働きかけを行っている。
「あそこにいた人たちはみんな、退職や解雇を乗り越え、復職を目標に頑張っていただけです。なのに無職という切り取り方をされ、その瞬間の収入で算定されたことには疑問を抱いてしまいます。なにより夫の命の価値が低いといわれているようで、強い憤りと悲しみを感じるほかないのです」
Aさんらが上げた声は社会にインパクトを与えた。あまりの犯罪被害者給付金の低さ 。そのことが多くの人の知るところとなり、政府もついに腰を上げた。
政府は今年6月、犯罪被害者施策推進会議を開き、給付金額を引き上げる方針を決定した。警察庁が有識者検討会を設置し、1年以内に制度を新たに整備する予定である。
「すべての車のドライバーに加入義務がある自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責保険では、交通事故で死亡した人の遺族に対して平均約2400万円が支払われます。無保険の自動車による事故、あるいは加害者不明で自賠責保険では救済されない事故の犠牲者には、政府保証事業によりそれ相応の額が支給されます。それらと比べて、犯罪被害者への給付金額はまったく及びません。ですので、せめてそこまで引き上げてもらいたいと訴えています」
損害賠償金を支払わない加害者も
Aさんは、民事訴訟を起こして損害賠償金を勝ち取ったとしても、犯罪被害者にはまた別の悩みがもたらされることが多いと話す。
「民事訴訟で勝訴して加害者による損害賠償金の支払いを確定させたとしても、そのお金が支払われないケースも多くあるんです。そこで、国が立て替えて被害者に支払い、国が加害者に請求する。そういった形にしてほしいと国に提言しているのですが、こちらに関しては、国はまだまったく動いていません」
大きな課題がこうして残っている。しかし、Aさんたちの活動を通して社会が犯罪被害者を見る目は大きく変わったのではないだろうか。
「事件直後にこの件が報じられた際には『所詮、カネかよ』っていう意見が多かったのですが、メディアで取り上げてもらったことで犯罪被害者がおかれる悲惨な状況を知ってもらうことができました。だいぶ社会から寄り添ってもらえるようになってきたのかなと感じています」
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